急成長の仮想通貨レンディングに試練:価格下落で100億円超の追い証が発生

ビットコインの40%を超える暴落で仮想通貨レンディング(貸付)企業は借り手に追加の担保を要求。誕生したばかりの市場は、初めての大きなストレステストを経験することになった。

ジェネシス・キャピタル(Genesis Capital)は担保として追加の1億ドルを要求したと3月13日午後、マイケル・モロ(Michael Moro)CEOは述べた。

ライバルのセルシス・ネットワーク(Celsius Network)は、225の機関に貸出しており、通常4〜6億ドルの貸付残高があるが、アレックス・マシンスキー(Alex Mashinsky)CEOによると、数億ドルのマージンコール(追い証)が発生している。

一方、Nexoの共同創業者アントニ・トレンチェフ(Antoni Trenchev)氏は、貸付を返済した顧客もいれば、清算した顧客もおり、これは住宅ローンの差し押さえに相当すると述べた。

BlockFiはドル建ての貸付へのマージンコール(追い証)を行い、一部の顧客は清算したとブログに投稿したが、それ以上の詳細についてはコメントを拒否した。

「5分前の時点では、全員が担保を積む必要があった」とモロCEOは述べた。

「清算はゼロだった。(中略)貸付を増やすために我々が行ったことは、この数日は追加の貸付を行わないことだった」

2019年、仮想通貨レンディングは急速に成長した。ある保有者は利息を得ようとし、別の保有者は仮想通貨を売却せずに現金を調達しようとし、そしてマーケットメーカーは即座に注文に対応するために借り入れをした。

こうした現象は潜在的には仮想通貨資産の流動性と価格発見を改善するものだが、同時に構造的リスクももたらした。

成り行きを静観

現在、ジェネシスは市場が落ち着くまで、担保が100%未満の貸付を行う予定はないとモロCEOは述べた。

ジェネシスはボラティリティの大きな環境で金利がどうなるかをまだ理解しようとしているが、デジタル・カレンシー・グループ(Digital Currency Group)は同社の残高の大部分を占めるビットコインでの貸付について、現在、約105%の貸付担保要件を110〜120%に引き上げている。

ボラティリティが低下しなければ、引受基準の引き締めが続くなか、担保要件はさらに上昇して130〜150%になる可能性がある。

市場の下落につれて、需要は法定通貨でのローンからビットコインでのローンに移行したとモロCEOは述べた。トレーダーがビットコインの現物と先物の価格差で利ざやを稼ごうとしたためだ。

姉妹企業のジェネシス・トレーディング(Genesis Trading)では約60%の顧客が売り、40%はまだ買いを入れているとモロ氏は語った。

この混乱を考えると「80/20か90/10になると思っていた」とモロ氏は述べた。 

「史上最高の日」

セルシスもまた12日の暴落の後、担保要件を引き上げた。だがマシンスキーCEOは同社にとって「史上最高の日」と述べた。「過去最高の融資を行い、過去最高の金利を科した」ためだ。

例えば、イーサリアムの貸付金利は今、約260%という驚くような利率となっている。通常は15〜20%、最も低い時は4〜5%だったとマシンスキーCEOは述べた。

しかしセルシスが拡大するに従い、信用枠の限度を厳しくする予定と同氏は述べた。

プロダクトの遅延

Nexoはユーザーが保有する仮想通貨で利息を稼ぐことができる製品のローンチを遅らせているとトレンチェフCEOは述べた(同社は仮想通貨を担保にした法定通貨ローンと、法定通貨とステーブルコインの利息を提供している)。

「2週間後にローンチする予定だった」とトレンチェフCEOは述べた。

「しかしローンチの確信が持てる前に、この状況が終わるのを待たなければならない」

トレンチェフCEOは、ビットコインは3867ドル付近で底を打ったようなので、法定通貨の貸付需要は堅調に続くと確信しており、金利を変える計画はないと語った。Nexoのローンの担保は通常200〜500%の間と同氏は付け加えた。

「担保付きローンの優れた点は引受プロセスをさほど心配する必要がない点」とトレンチェフCEOは述べた。

「デジタル資産は5番街のペントハウスよりも担保として優れていると考えている。ペントハウスは安定しているかもしれないが、デジタル資産では即時の流動性を得ることができる」

翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸
写真:Shutterstock
原文:$100M+ in Margin Calls: Crypto Lenders Demand Collateral as Market Buckles