イエール大学の研究者、二酸化炭素排出量の追跡にハイパーレジャーブロックチェーンを活用

現在の封鎖状態では、ブロックチェーン、IoT、AIなどのテクノロジーは我々を守ることができると言うのは安直に聞こえるだろう。しかし、こうしたツールの組み合わせこそ、今我々が直面している最大の脅威「気候変動」を緩和することができるとソフトウエア設計者が考えているものだ。

炭素会計

イエール大学オープン・イノベーション・ラボ(OpenLab)は、ブロックチェーン、IoTセンサー、他のデータサイエンスツールを使って、二酸化炭素排出量を測定・追跡する方法を模索している。

莫大な作業だが、同ラボのオープン・クライメート・プロジェクト(Open Climate project)は、世界の平均気温の上昇を産業革命以前の水準から2℃以下に抑えるための国連の枠組みである「パリ協定」と目標を共有する世界的な炭素会計(カーボンアカウンティング)メカニズムの基礎を築いてきた。

「私は気候変動を全体像として理解しており、地球規模の炭素収支を管理している」とオープン・イノベーション・ラボの創設者マーティン・ワインスタイン(Martin Wainstein)氏は語った。

「私にとっては、会計の問題となっている」

オープン・クライメート・プロジェクトの最近の共同作業の1つは、リナックスファウンデーション(Linux Foundation)のハイパーレジャー(Hyperledger)ブロックチェーンの中で行われており、ワインスタイン氏は現在、クライメート・アクション&アカウンタビリティワーキンググループの共同議長を務めている。

オープン・クライメートがアイデンティティに焦点をあてたハイパーレジャーのプロジェクトであるIndy、Ariesで行った作業に続き、ハイパーレジャーのソウトゥース(Sawtooth)ブロックチェーン、いわゆる「グリッド(Grid)」がサプライチェーンに焦点をあてていることと同様に、ハイパーレジャーが気候変動に焦点をあてることはあり得るとワインスタイン氏は述べた。

「最終的に、気候変動のためのグリッドのような特定の領域に特化したフレームワークを持つことは合理的だと考えている。おそらく数カ月以内に、より統合的な開発と発表があるだろう」

監査のチャンス

新たなデジタルプロトコルを使って、正確に炭素を会計処理することは、技術に精通した「ビッグ4」会計事務所にとっても「きわめて大きなチャンス」とワインスタイン氏は述べた。

デロイト、KPMG、EY、PwCは、環境に焦点が当てられた今年の世界経済フォーラム(WEF)の年次総会、いわゆるダボス会議で「Toward Common Metrics and Consistent Reporting of Sustainable Value Creation」と題した文書を共同で発表した。

我々は、この4社にカーボンアカウンティングに関するコメントを求めたが返答はまだない。

「私はビッグ4(会計事務所)の何社かと話をし、カーボンアカウンティングが将来、彼らのビジネスの大きな部分を占めるようになると説明してきた。彼らは理解し始めていると思う。我々は設計の技術面に焦点を当てており、今後の取り組みでそれを取り入れ、コンソーシアムレベルで作業を開始できるようにしたいと考えている」

コンソーシアムの構築については、これまでの教訓を踏まえると、大物を慌てて加えるのではなく、なによりもまず、段階的に進めていくことが重要だ。

例えば、オープン・クライメートは今、第一段階にあり、社会貢献活動の資本を集め、そして非営利団体、特に大学などの機関が協力して活動するための関係を構築している。

「順調に進めば来年の初め頃、企業の資産を集めたコンソーシアムで資金調達を行うモデルを構築する予定。しかし、まずはガバナンスのメカニズムを作ることが先決だ」

次の当面のステップは、4月に開催される「オープン・クライメート・コラバソン(Open Climate Collabathon)」。昨年のコラバソンはイエール大学の研究室のみで開催され、約400人の開発者と気候研究者が集った。

今年のコラバソンは、新型コロナウイルスによる封鎖のため、ほぼ完全にオンラインで開催される見込みだ。

「リモート環境でのコラボレーション技術を向上させることは非常に重要と考えている。今は他に選択肢はない」

翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸
写真:Shutterstock
原文:Yale Researchers Turn to Hyperledger to Track Carbon Emissions