HSBC、1兆円超の債券をブロックチェーンに移行

HSBCは100億ドル(約1兆1000億円)の紙ベースの私募債の記録をR3のコルダ(Corda)ブロックチェーンに移行させた。2020年から2021年にかけてプロジェクトを強化する計画だ。

当初、200億ドルの移行を計画

「今後1年から1年半で(このプラットフォームに)新規顧客、既存顧客の私募債を、量、価値ともに大幅に追加することができると確信している」とHSBCのカストディイノベーション・戦略イニシアチブ責任者キアラン・ロディ(Ciaran Roddy)氏は述べた。

HSBCは以前、2020年3月までに200億ドルを移行させると発表していたが、クライアント要望に対応する機能追加に取り組んだため実現は遅れているとCoinDeskに語った。

仮想通貨分野への参入は当面予定にないが、HSBCはまだデジタル化されていない資産、取引所ベースのセキュリティトークンなどに注目している。

同行はまた、ファンドのライフサイクル管理にトークンを使用したいというクライアント要望や、1つにまとめた資産バスケットのトークンも見据えている。

トークン化を視野

HSBCが従来のデータベースではなくブロックチェーンを使っているのは、私募債をデジタル化した後にトークン化する計画があるためだ。私募債とは公開市場では販売されない株式や債券のこと。

他の企業とは違い、HSBCはこのデジタル化プロジェクトによるコスト削減効果の金額は見積もっておらず、代わりに「社内効率の改善」としている。ロディ氏は、同行のコルダを使ったこの取り組みの主な目的は、リアルタイムの情報アクセスと語った。

「これは我々自身の将来を見据えた取り組み。今後、ブロックチェーンは主流になり、情報を得るために顧客に銀行に来てもらうのではなく、自分で使えるツールを提供し付加価値を与えられるものになっていく」とロディ氏は語った。

問い合わせは通常簡単なものだ。だが記録は紙ベースであり、クライアントは銀行に電話をし、銀行は電話を受けてから回答内容を調べなければならない。

トークン化によって銀行はスマートコントラクトのようなツールを使えるようになるが、銀行はまずセキュリティトークンなどの発行者に自分たちのアイデアに参加してもらい、規制当局にはトークンは合法なものであり、法的強制力を持った譲渡可能な資産であると認識してもらわなければならない。

イージーアクセス

クライアントは、HSBCのオンラインアカウントを通して、同行が「デジタル金庫室(Digital Vault)」と名付けたコルダ・プラットフォームにアクセス可能だ。

「クライアントが資産をクリックすると、その資産に対して銀行が保管しているすべての書類が一覧で表示されます」とロディ氏は述べた。

クライアントはまた、規制当局や会計監査官のような第三者に対してシステムへのアクセスを許可することもできる。 一部のクライアントはすでに自身のアセット・マネージャーにアクセスを許可している。

HSBCは、金融機関が資産発行の優れた手段としてトークンを利用するようになる世界を描こうとしている。

「多くの(伝統的な)取引所がブロックチェーン技術を使っている」と同氏は述べた。

「HSBCは決済機関であり、証券を預かる預託機関。我々は(トークン)市場で取引を望む顧客をサポートできるようにしたい」

翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸
写真:Shutterstock
原文:HSBC Puts $10B of Private Placements on R3’s Corda Blockchain