フランス中央銀行は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の実験に向けた提案を求めている。
CBDC議論の最前線に
フランス中央銀行は3月27日、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の実験に向けた提案要請を発表した。実験プロジェクトは、フランス中央銀行がCBDCのリスクとメカニズムを理解すること、およびユーロ圏でのデジタルキャッシュ議論に貢献することにも役立つことになる。
今回の提案要請によって、フランスはユーロ圏でのCBDC議論の最前線に立つことになる。現状ではフランスは、CBDCの実験を開始する最も知名度の高いユーロ圏国家となる(スウェーデン国立銀行もデジタル通貨「eクローナ」の実験を行っている)。
フランス中央銀行は少なくとも4年にわたって、実験的で先進的なフィンテック・プロジェクトを提唱しており、ときに求人やスピーチを通して、CBDC開発も視野に入れていることを示唆してきた。
「我々は中央銀行として、民間の取り組み、特に金融機関の間の決済とテクノロジーが加速し、公的・政治的需要が高まっている時に、イノベーションを求める要請を開始しなければならないし、開始したいと考えている」とフランス中央銀行のフランソワ・ビルロワドガロー(François Villeroy de Galhau)総裁は2019年12月4日のスピーチでCBDCについて語っていた。
「他の国々が道を開いてくれた。今は我々が役割を果たす時。野心的かつ入念に」
3つのユースケースを検討
3段階の実験では、デジタル通貨の設計からその影響の分析、最終的な運用まで、CBDC発行のあらゆる側面において、提案を経て選定されたプロジェクトを実施する。
フランスのプロジェクトは、CBDCの3つのユースケースを網羅する。つまり、金融商品に対する決済、他の中央銀行デジタル通貨に対する決済、そしてデジタル資産に対する決済だ。同行によると、この実験で通貨を発行することはない。すべての取引は同行が管理し、各決済日にトークンは破壊される。
さらにプロジェクトでは、市場インフラ、金融政策、マクロ経済要素、法的・規制的枠組みにCBDCがもたらす可能性がある影響を検討する。
要請の中でフランス中央銀行は、提案はテクノロジー・ニュートラル、つまり提案者は、必ずしもブロックチェーンベースのCBDCを開発する必要はない。「だが、革新性は選考基準となる」と述べた。
提案者は、EU内で「設立されて」いなければならない。フランス中央銀行は、7月10日に最大10の候補者を選定する。
要請文書でのプロジェクト概説によると、フランス中央銀行は最終的にCBDCを発行しない可能性もある。
「実際、CBDC発行の決定は、すべてユーロシステムの問題」とフランス中央銀行は述べた。
「そのため、フランス中央銀行はそうした実験を永続させたり、広範囲に実施するつもりはない」
元フランス経済・財務相のクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)氏は現在、欧州中央銀行(European Central Bank:ECB)の総裁を務めている。同氏は昨年11月の就任以来、CBDC開発におけるECBの役割を拡大するよう求めている。
翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Wikimedia Commons
原文:French Central Bank Puts Out Call for Digital Currency Experiments