かつて「MLBクリプト(MLB Crypto)」と呼ばれていたゲームがモデルチェンジ。基盤となるブロックチェーンであるイーサリアムへの依存を減らした。
機能の一部をアプリからサイトに移行
3月31日、MLBチャンピオンズ(MLB Champions)は、多くの新機能を導入した一方、ノン・ファンジブル・トークン(NFT)向けのアプリ内ミンティング(鋳造)機能を削除したと発表した。
今回のアップデートでは、さまざまなプレーの選択肢が追加されたことに加え、ゲームの外で交換できる独自のデジタルアイテムを作るための別の手順も追加された。つまり、ゲームの新バージョンでは、「ミンティング」システムがモバイルアプリからMLBチャンピオンズのウェブサイトに移された。
ゲームの開発元ルーシッド・サイト(Lucid Sight)のランディ・サーフ(Randy Saaf)CEOは、同社は近い将来、独自トークンを備えたアプリ内マーケットプレイスをローンチする予定と述べた。検閲の懸念からイーサリアム(ETH)は受け付けない。
サーフ氏は、分散型アプリ(dapp)はシャドーバン(実質的なアカウント凍結)に近い状態であるため、MLBチャンピオンズはGoogle Playに存在する数少ないブロックチェーンベースのゲームの1つになっていると語った。
「仮装通貨ゲームは今、苦境に立たされている」とサーフ氏は電話インタビューで語った。
そのため、MLBチャンピオンズはゲーム内での仮想所有権を生み出すために、カスタムビルトの「デジタル・スカーシティ(希少性)・エンジン」にほぼすべてを移行させる。
サーフ氏は、ゲーム企業としてルーシッド・サイトが注力することに合致するモンゴDB(MongDB)データベースを開発したと語った。また同社は、宇宙ゲーム「クリプト・スペース・コマンダー(Crypto Space Commander)」といった他のゲーム内で購入できるアイテムも揃えている。
「スカーシティ・エンジン(Scarcity Engine)の本質は、ブロックチェーンの複雑さを隠すことにある。もしブロックチェーンではないように見えたなら、彼らは良い仕事をした」と同社の投資家ジョナサン・スワイク(Jpnathan Sweig)氏はCoinDeskに語った。
デジタル希少性
これは、コンセプトとしてのデジタル希少性が、同社にとって、うまく行かなかったというわけではない。
むしろ、ゲーム基盤としてイーサリアムを組み込むことは、新規ユーザーを参加させるには複雑すぎることが判明したとサーフ氏は述べた。
同業のNFTスタートアップDapper Labsも最近、イーサリアムについて同様の考えを表明し、専用ブロックチェーンへの移行を選択した。
例えば、MLBチャンピオンズの旧バージョンでは、ユーザーは、アプリをダウンロードし、取引所でイーサリアムを購入し、ウォレットの一種であるメタマスク(MetaMask)を使ってゲームに移動させる必要があった。普通のユーザーは、スマホでゲームをしたいだけとサーフ氏は語った。
またルーシッド・サイトは、イーサリアムのトランザクションスピードの遅さに対処するスケーリングソリューションを待っているわけにはいかないとサーフ氏は述べた。
他の仮想通貨プラットフォームは、より高速なトランザクションを提供するが、それでもグーグルやアップルといった大手テック企業からの検閲問題に直面する。
普及を目指して
「我々は皆、大規模な普及を望んでいる。その方法は、ゲームに仮想通貨を追加することだと思う。だが仮想通貨のためではない」
同社は、現在のゲーム市場を考えると、従来型のデータベースとブロックチェーンの組み合わせという中間的な方法が最善のアプローチという結論に達した。
「平均的な消費者は、無料バージョンを求めており、モバイル優先であることが必要だ」
同時に、プレイヤーはまだイーサリアム・マーケット自体にアクセス可能で、オープンシー(OpenSea)のようなサードパーティー・マーケットで、高額で取引されているMLBチャンピオンズのアイテムもある。
「(MLBチャンピオンズ)はモバイルデバイスで大量のユーザーにアクセス可能でありつつ、イーサリアムのデジタル所有権のメリットを提供する数少ないブロックチェーンゲーム」とルーシッド・サイトの共同創業者オクタビオ・ヘレーラ(Octavio Herrera)氏はメールで述べた。
「ユーザーは、スマートフォンでMLBチャンピオンズをプレーでき、希望するユーザーはイーサリアム上でMLBチャンピオンズのフィギュアをノン・ファンジブル・トークン(NFT)としてミンティングし、弊社マーケットプレースやNFT対応の他のマーケットプレースで取引できる」
現在、ロサンゼルス・ドジャーズの外野手ムーキー・ベッツ選手、2017年のMVP、ホセ・アルトゥーベ選手といったプレイヤーは、0.25イーサ(約35ドル)で入札可能だ。
ルーシッド・サイトは2019年4月、シリーズBラウンドで600万ドルを調達したと発表した。ラウンドには、サレム・パートナーズ(Salem Partners)、ギャラクシーEOS VCファンド(Galaxy EOS VC Fund)、デジタル・カレンシー・グループ(Digital Currency Group)、ブレークアウェイ・グロウス(Breakaway Growth)、フロンティア・ベンチャー・キャピタル(Frontier Venture Capital)、アニモカ・ブランズ(Animoca Brands)などが参加した。
2016年には、VRゲームに注力するために350万ドルを調達している。
翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Lucid Sight
原文:‘MLB Champions’ Downplays ETH, Aims for Mass Market in New Game Reboot