「これほどブロックチェーンが社会に実装されている国はほかに見当たらない」
マネックスグループ子会社で暗号資産事業を手がけるマネックスクリプトバンクが、4月3日に発表したレポート「中国におけるブロックチェーン動向と将来予測(2020)」で、中国のブロックチェーンの取り組みをこのように評価した。
A4判、全98ページのレポート(PDF)では、中国でブロックチェーンがビジネスとして運用されている現状を示し、特にアリババやテンセントなどの取り組みについては単独の章を割いて説明している。
ブロックチェーン関連企業3万社、世界の投資額の1/4を占める中国
レポートによると、中国のブロックチェーン関連企業は、2019年の設立数が1万1,416社で、累計で3万社を超えたという。これは日本の100倍以上に当たる。ブロックチェーン分野への投資も盛んで、公開情報によれば2019年の投資額は1200億円超、世界の25%に相当するという。
BATHと呼ばれる中国の4大IT企業──バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ──ブロックチェーンサービスを提供しており、レポートは各社のブロックチェーンについて共通点を指摘。ファーウェイを除いて、自社開発のブロックチェーンをもち、コンソーシアムなどで企業を横断した取り組みを進めている。レポートは、「技術の適切な理解と普及が進んでいる」と評価した。
バイドゥは著作権管理、アリババはアントブロックチェーンを開発
バイドゥは著作権管理を念頭に、XuperChainを開発しているという。アリババは、グループの金融会社であるアントフィナンシャルを中心に、アントブロックチェーンを開発している。またグループのアリババ・クラウドが、アントブロックチェーンやハイパーレジャー・ファブリック、クオラムを通じたブロックチェーンサービスを提供している。
テンセントは深センで請求書サービスを展開
メッセージングアプリに強みを持ち、近年はゲームにも乗り出しているテンセントは、同社が最大の株主であるデジタル銀行のWeBankを中心に、コンソーシアムチェーンFISCO BCOSの開発を主導している。また深セン市でブロックチェーンを基盤とした請求書サービスも展開。そこではハイパーレジャー・ファブリックを基盤としたコンソーシアムが使われている。
ファーウェイは暗号資産に対応したスマホも開発
ファーウェイは、ファーウェイ・クラウド・ブロックチェーン・サービスと呼ばれる、クラウドと統合したブロックチェーンサービスを2018年11月から正式提供している。暗号資産に対応したスマートフォンも開発し、強みのハードウェアを活かしている。
データサービス加入者は無料で閲覧可
レポートは、第1章「市場調査」から始まり、市場規模や政府の動向などを整理、第2章の「業界動向」では銀行や保険、中央銀行デジタル通貨、医療など業界ごとのブロックチェーン活用について分析。第3章が「BATHの動向」で、第4章「香港・台湾の動向」では両地域の現状分析と考察を披露している。レポートはマネックスクリプトバンクが提供するデータサービス「LOOKBLOCK」に加入しているユーザーは無料で読めるほか、5万円(税別)で販売している。
文:小西雄志
編集:濱田 優
写真:Shutterstock