韓国銀行(BOK:Bank of Korea)は中央銀行デジタル通貨(CBDC)の新たなパイロットプログラムを開始した。動向を傍観していれば、他国にCBDCに関する主導権を握られるとの懸念が強まった。
韓国の中央銀行「韓国銀行」は4月6日、日本やアメリカなど、他の先進国は想定よりも早くデジタル通貨計画を進めていることを受け、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の提案を再評価したと述べた。
様子見のアプローチをやめ、韓国銀行は4月から22カ月のパイロットプログラムを推進し、現金をデジタル通貨で置き換えることの技術的・法的な影響を評価する。
「アメリカと日本は、近い将来、CBDCを発行する予定はない。だが最近、スタンスを変え、この新たな分野の研究を強化している」と同行関係者はコリアタイムス(The Korea Times)に語った。
「韓国銀行はまた、内外の決済環境の急速な変化に対して積極的な姿勢を取ることを決定した。そこで我々はCBDCパイロットシステムを立ち上げ、導入についての技術的、法的問題を確認していく」
国際競争の新たなテーマに
中央銀行デジタル通貨(CBDC)は、既存の国際競争の中の1つになってきており、デジタル通貨はドル中心の世界経済の変革を目指す通貨戦争の中心的存在になっているとの見方もある。
中国はデジタル人民元を最優先事項と位置づけ、それにより他国の議員らは政府に中央銀行デジタル通貨の取り組みを開始することを求めている。
2月、日本では自民党議員らが政府に提言を提出し、中国の「通貨覇権」を目指す取り組みに対抗して、デジタル通貨の研究をアメリカなどと最大限、共有、連携することを求めた。なお、日本銀行はすでにCBDCの国際的なワーキンググループに参加している。
アメリカでは、元規制当局トップ、元財務省次官、元大統領顧問からなるグループがデジタルドルの推進を支援している。
アメリカ政府自体はまだ手の内を明らかにしていないが、FRB(連邦準備制度理事会)のラエル・ブレイナード(Lael Brainard)理事は2月、デジタルドルがフェイスブックのリブラのような民間の取り組みに対抗できるかどうか調査中と述べた。
韓国銀行は以前、中央銀行デジタル通貨については懐疑的であることを表明しており、直近でさえ、デジタル通貨を発行する計画はないと述べていた。
だが4月6日の5ページにわたるプレスリリースには「国内外の状況」に大きな変化があれば、立場を変える可能性もあるとの注意書きがあった。
パイロットプログラムの結果は、他の主要な中央銀行と共有していくと韓国銀行は述べた。
翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸
写真:Shutterstock
原文:South Korean Central Bank Accelerates Digital Currency Pilot to Keep Up With Other Nations