EVメーカーのテスラは上海国際港務グループ(Shanghai Port Group)と提携し、ブロックチェーンを使った中国への輸入プロセスの迅速化をテストしている。
ブロックチェーンを活用した物流ソリューションを展開するカーゴスマートは4月7日、テスラを含む3社と共同でブロックチェーンを基盤とするアプリの試験運用を行ったと発表した。今回のテスト運用には、上海港唯一の港湾オペレーターである上海国際港務グループ(SIPG:Shanghai International Port Group)と貨物船運航大手のCOSCOが参画した。
同アプリは貨物の引き渡し時間を短縮し、テスラの物流チームが貨物をより簡単に受け取ることができるようにする。
2019年12月に行われたテストでは、ブロックチェーンを使ってテスラを含む関係者間で関連する出荷データと書類を共有した。カーゴスマートによると、共有データへのアクセスはプロセス全体を効率化し、テスラは「信頼できる安全なプラットフォーム上で受け取り手続きを迅速化」できた。
COSCOの物流部門責任者ウ・ユー(Wu Yu)氏によると、テストは「すべての関係者に単一の正しいドキュメントを提示することで、貨物の受け取りプロセスのみならず、下流のサプライチェーンでも大幅な効率化を実現した」。
中国市場に注力するテスラ
貨物の引き渡しプロセスでは、混乱や盗難を避けるためにクライアントには船荷証券の原本や貨物運送状(レシートのようなもの)が求められる。それらは、港湾オペレーターが貨物を特定し、クライアントに引き渡すために使われる。
通常はかなりシームレスに行われるが、船荷証券の原本や貨物運送状を紛失、破損した場合には、貨物の引き渡しプロセスは停止する恐れがある。それらがなければ、オペレーターは貨物を引き渡すことはできないからだ。これによりサプライチェーン全体で遅延が生じ、埠頭での停泊時間を超えることで港湾当局から重い罰金が科される可能性がある。
テストが成功に終わったことを受け、カーゴスマートは中国の青島、タイのレムチャバンなど、アジアの他の港でブロックチェーンアプリのテストに取り組む予定と述べた。同社はさらにブロックチェーンを運営・管理するための、海運業者が所有するコンソーシアムの構築を目指している。
今回の発表では、テストで使われたブロックチェーンのタイプや、テスラが中国に輸出した製品の種類については言及されていない。テスラは上海の工場を含めて、中国に複数の工場を持ち、バッテリーの製造とEVの組み立てを行っている。
ロサンゼルス・タイムズによると、中国当局は今年初めの新型コロナウイルスの流行から迅速に回復するためにテスラが必要とする物資を急ぎ供給してきた。ブルームバーグによると、テスラはひそかに中国に注力しており、早ければ今週にも中国市場向けに新たに、長い後続距離を持つEVを発表する可能性がある。
テスラが中国や他国での製品輸入にブロックチェーンを使い続けるかどうかはわからない。CoinDeskはテスラにコメントを求めたが、記事公開時までに返答はなかった。
翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸
写真:humphery / Shutterstock.com
原文:Tesla Completes Blockchain Pilot to Speed China Imports Process