金融業界でもデジタル化、デジタル・トランスフォーメーションが進む中、NTTデータが、決済領域分野に強いインフキュリオン・グループとの資本業務提携に合意した。
インフキュリオンは、クラウドやAPIを利用してインターネットで提供される銀行・金融サービスであるBaaS(Banking as a service、バンキング・アズ・ア・サービス)基盤を提供するフィンテックスタートアップ。3月にも新生銀行グループにプラットフォームを提供すると発表したばかりだ。
4月15日のインフキュリオンの発表によれば、両社は今後、金融機関向けに共同で銀行ウォレットサービスを提供する予定。NTTデータがインフキュリオンに出資するが、出資額は明らかにされていない。
「金融デジタル化の大きな転換点になる」
インフキュリオンは2006年設立。現在、BaaS基盤を金融機関や提携企業向けに推進している。同社のウォレットASPシステム「ウォレットステーション」の特徴は、通常のウォレットとしての認証管理、決済処理などのAPI基盤を提供できるだけでなく、加盟店で利用できるクーポン機能や銀行口座からの後払いサービス「SLiDE(スライド)」、自動貯金サービス「finbee(フィンビー)」などの機能を、銀行や提携企業のニーズに合わせてカスタマイズできることだという。
金融機関向けに勘定系のサービスを提供してきた実績・ノウハウがあるNTTデータは、このところ急速に高まっているオープンバンキングのニーズにこたえるため、オープンAPIベースのソリューション提供を検討。その一環で、ドイツのMambuが開発したクラウド型勘定系サービスを導入、初期技術検証が完了したと2019年1月に発表していた。
インフキュリオン・グループの丸山弘毅代表取締役は、同社とNTTデータの提携について、「金融デジタル化において大きな転換点になるのではないか」と指摘。その上で、「日本の金融を支えているNTTデータ社と、決済やAPIを通じて培った当社のBaaS基盤の連携により銀行をサービス化し、ユーザーに新しい金融体験を提供」すると抱負を述べた。
期限迫る金融機関と電子決済等代行業者の契約締結──オープンAPI
BaaSは、銀行が従来から提供してきたサービスを、金融ライセンスやソフトウェアを用いて再構築し、インターネットを使って企業に提供するサービス。欧米ではこの流れはひと足早く強まっており、テックスタートアップなどが金融サービス提供に乗り出している。
カギとなるのがAPIの公開だ。2017年に成立、18年施行の改正銀行法で、金融機関と電子決済等代行業者との間で契約を締結するよう求められている。この契約の締結が猶予期限が2020年5月に迫っており、それ以降、契約が未締結のままでは銀行のデータを閲覧することが禁じられることになっていた。しかし金融庁は4月14日、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、契約締結の期限を5月末から9月末まで延長すると発表した。
文・編集:濱田 優
画像:プレスリリースより
訂正:金融庁の発表を受け、最終段落に情報を追加しました。