アメリカ政府は4月15日、北朝鮮の大金を狙った、多くの場合は暗号資産(仮想通貨)に関連した世界的なサイバー犯罪を阻止するための積極的な対応策を概説した。
大量破壊兵器開発を阻止
北朝鮮によるものと疑われるサイバー攻撃リストを示しつつ、国務省、財務省、国土安全保障省、FBIは、北朝鮮の大量破壊兵器開発を阻止するためには同国の資金の流れ──過去2年間で15億ドルの暗号資産(仮想通貨)を含む、数十億ドル(数千億円)の資金を集めたとされる──を断ち切ることが重要と述べた。
将来起こりうる攻撃を阻止するために「我々は、政府、産業界、市民社会および個人に対して、関連するすべての行動を取ることを強く要請する」と当局は述べた。
これにはデジタル通貨を使ったアンチマネーロンダリングへの厳しい枠組みの導入、北朝鮮ITワーカーの追放、最善なサイバー対策、法執行機関とのコミュニケーションなどが含まれる。こうした手順を組み合わせることで、アメリカ政府が「Hidden Cobra」と呼ぶ脅威を緩和することができる。
北朝鮮による暗号資産関連の犯罪は、少なくとも2017年5月、ランサムウェア「ワナクライ(WannaCry)」が何十万台ものコンピューターに感染し、身代金としてビットコインを要求した時まで遡ることができる。各国政府はハッキングは北朝鮮によるものと非難した。
以来、アメリカの政府機関は、Hidden Cobraはますます巧妙かつ多様なサイバー犯罪──いくつかは完全に暗号資産を狙ったもの──を展開していると訴えている。
クリプトジャッキング(不正なマイニング)によって、2万5000ドル相当のモネロを集め、取引所から盗んだ何億ドルもの資金はマネーロンダリングされた。そうでなければ経済制裁の対象となっていた資金だ。
ゼロ・トレランス政策を維持
こうした活動は今後、より顕著になると見られている。北朝鮮は2020年、モネロをターゲットにした活動を増加させると見られており、15億ドル相当の暗号資産マネーロンダリングのネットワークも存在すると言われている。
「北朝鮮は、サイバー能力を使って金融機関からも資金を盗み、(国際的なサイバースペースの行動基準とは)まったく異なる破壊的で有害なサイバー活動のパターンを示している」と政府機関は述べた。
アメリカ当局は、北朝鮮の暗号資産の取り組みの支援に思えることすら許容しないゼロ・トレランス政策を維持している。イーサリアム開発者バージル・グリフィス(Virgil Griffith)氏は、北朝鮮の暗号資産会議に出席し、ブロックチェーンを使って経済制裁を回避する方法を解説したとして2020年初めに起訴された。
北朝鮮は、法定通貨と仮想通貨で20億ドルを盗んだという疑いを強く否定し、「卑劣なゲームに過ぎない」と主張している。だが、世界各国は同意していない。
翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸
写真:Wikimedia Commons
原文:US Agencies Publish List of North Korea’s Alleged Crypto Crimes