仮想通貨は暗号資産に、セキュリティトークンのビジネスが始動へ──改正資金決済法・金商法きょう施行

改正資金決済法と改正金融商品取引法が、きょう5月1日から施行され、「仮想通貨」という呼称が「暗号資産」に切り替えられる。また「電子記録移転権利」が創設され、セキュリティトークンの範囲が明確化されることから、セキュリティトークン、デジタル証券発行に関わるビジネスが立ち上がり、活発になると予想されている。一方、投資家保護の観点からカストディやICO、デリバティブ取引が規制対象となるなど、暗号資産を取り扱う企業にとっては厳しい時代になりそうだ。

改正資金決済法のポイント──暗号資産カストディ(管理)の規制強化など

まず改正資金決済法に関するポイントは、仮想通貨の呼び方が暗号資産に替わることのほか、暗号資産カストディ業務に対する規制が追加されたり、暗号資産交換業への規制が強化されたりする点だろう。

暗号資産カストディとは、ビットコインなどの暗号資産の管理を指す。昨年成立した改正法による定義では、「他人のために暗号資産の管理をすること」とされただけだった。しかしその後にガイドラインが発表され、暗号資産を集約的に管理する事業を営む企業には、すべて暗号資産交換業の認可が必要になった。

暗号資産のウォレットサービスを提供するような業者は交換業の免許が不要だったが、顧客の資産を事業者が移動させられるような形態の場合、交換業の免許が必要となる。このため規模の小さい事業者などは事業の継続が難しくなることが考えられる。

改正金商法のポイント──セキュリティトークンによる資金調達が可能に

改正金商法では、電子記録移転権利が創設され規制が始まるほか、暗号資産デリバティブ取引が規制される。そして、暗号資産と暗号資産デリバティブの取引について不公正な行為(風説の流布など)が規制されるようになる。

まず電子記録移転権利とは、今回の改正法施行で最も注目が集まっているセキュリティトークンのことだ。ブロックチェーンを使って発行されるトークンのうち、有価証券の性質をもったものをセキュリティトークンといい、デジタル証券とも呼ばれる。これを発行して行われる資金調達がSTO(セキュリティトークン・オファリング)だ。

通常の株式や債券を発行するより低いコストで資金調達できることから、小口の調達も可能になると見られる。大手金融機関を中心にセキュリティトークン発行にかかわるビジネスを模索する動きが既に出ており、今後本格化すると予想されている。

暗号資産デリバティブ(証拠金取引)の規制については、従来は金商法の適用外だったが、今後は同法の規制対象となる。これにより業者は金融商品取引業の登録が必要になる。顧客保護や業者のリスク管理などの観点から、「想定元本の 50%以上の 証拠金の預託を受けずに業者が暗号資産を用いた証拠金取引を行うこと」が禁止される。また相場操縦や風説の流布など、株取引では禁止されていた行為が、暗号資産の分野にも持ち込まれることになる。

STO協会とJVCEAが認定団体に。BitMEXが日本居住者の取引を停止

5月1日の改正法施行は官報で示されていた。このため、4月だけでもさまざまな動きが見られている。

海外の暗号資産取引所BitMEXは、改正法が施行される5月1日午前0時から日本の居住者が新たな取引をできなくする旨を発表した。最大100倍のレバレッジがかけられることが特徴で、日本からの利用者も多かったと見られる。

取引停止を発表した理由として同社はブログで、「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の改正が今月初旬の政令により5月1日から施行されることになったことを受けたもの」と説明。その上で「暗号資産商品に関して規範を定立し、急速に拡大するアセットクラスの発展を支えようとされる当局の努力を支持」するとした。

また金融庁は4月30日、一般社団法人である日本STO協会と日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)を「認定金融商品取引業協会」として認定したと発表した。

日本STO協会は、SBIホールディングス代表取締役社長である北尾吉孝氏が代表を務め、野村、大和、SMBC日興、みずほ、東海東京、SBI、楽天、auカブコム、マネックスの各証券会社が加盟している。

JVCEAは マネーパートナーズ 代表取締役社長の奥山泰全氏が会長を務め、bitFlyerやコインチェック、ビットバンク、QUOINE、ディーカレット、TaoTao、LVCなど暗号資産交換業者(ほか登録の申請中、申請予定の事業者含む)で構成される団体。5月1日に仮想通貨の呼称が切り替わることを受け、日本暗号資産取引業協会への名称を変更する。

文・編集:濱田 優
画像:Makistock / Shutterstock.com