少額ビットコイン保有者が急増──新型コロナ対策の1200ドルが流入か

少額のビットコイン投資家が急速に増加しているようだ。またある事実は、そうした増加の大半はアメリカで起こっていることを示している。

グラスノード(Glassnode)のデータによると、少なくとも0.1ビットコインを保有しているネットワークアドレス数は史上最高数を記録し、4月26日に301万784に達した(日本時間5月2日12時時点で、0.1ビットコインは約910ドル、約97000円)。

こうしたアドレス数は2月中旬頃から指数関数的に増加し始めた。FRB(連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長が議会に対して、FRBには次の不況に対処するための十分な力が不足していると示唆した時期だ。

少なくとも0.1ビットコインを保有しているアドレス数
出典:Glassnode

この数字から市場動向について明確な結論を推測することは難しい。例えば、ユーザーは複数のアドレスを保有でき、新しいアドレスがすべて新しい投資家を意味するわけではない。

またグラスノードによると、少なくとも0.1ビットコインを保有するビットコインウォレット数は、2018年初頭に大幅に減少したあと、徐々にだが着実に増加している。

しかし、アメリカに拠点を置く複数のビットコイン投資サービス企業は、ビットコインの少額ホルダー数の増加速度はますます高まっているという考えを裏付けている。

初めての購買者

スワン・ビットコイン(Swan Bitcoin)はロサンゼルスに拠点を置くビットコイン投資サービス企業で「新型コロナウイルス・パニックのなかで事業をスタートした。同社では平均して「月に300ドル以上」をビットコインに投資する顧客が「大幅に増えて」おり、なかには「数千ドル以上」を投資する顧客もいると共同創業者兼CTOのヤン・プリツカー(Yan Pritzker)氏は語った。

最近では「多くの顧客が(ビットコイン)購入計画を強化し初めている」。

ビットコインの業界用語では、こうしたユーザーは「サットを積んでいる(stacking sats)」と言われる──サット(sat)、つまりサトシとは、ビットコインの最小単位「0.00000001ビットコイン(1億分の1ビットコイン)」を意味している。

サンフランシスコに拠点を置くビットコイン仲介業者リバー・ファイナンシャル(River Financial)では、「数百から数千ドル相当のビットコイン」を購入する顧客が大幅に増加していると創業者兼CEOのアレクサンダー・ライシュマン(Alexander Leishman)氏は語った。

「弊社プラットフォームでのオーダー数は3月中旬に2倍になり、それ以降もきわめて高い増加率を維持している」とライシュマンCEOは語った。

「顧客の多くは直接私に対して、政府があまりに多くのドルを発行しているため、ビットコインを購入していると語った。これらの人々の多くはビットコインを初めて購入する人たちだ」

経済対策による支出?

コインベース(Coinbase)のブライアン・アームストロング(Brian Armstrong)CEOは4月半ば、1200ドルの買い注文を行う顧客数の増加を示す不可解なチャートを公表した。1200ドルは米内国債入庁(Internal Revenue Service)が低中所得者を対象に送った経済対策の小切手の金額と同額だ。

データ企業コインゲッコー(CoinGecko)によると、コインベースはアメリカに拠点を置く暗号資産(仮想通貨)取引所の中で最大の取引高を誇る。

コインベースでの1200ドルの買い注文
出典:Brian Armstrong via Twitter

アームストロングCEOがこのデータをツイートした時、1200ドルは約0.17ビットコイン相当だった。

「ここ数カ月におけるビットコインの少額購入の増加に驚いてはいない」とドイツ銀行(Deutshce Bank)の元アソシエイトで、デルフィ・デジタル(Delphi Digital)の共同創業者アニル・ルラ(Anil Lulla)氏は語った。

「重要なことは、これらの人々の一部は以前はビットコインには価値がないと考えていたが、マクロ経済的な背景によってビットコインに魅力を感じ始めたことだ」

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Shutterstock
原文:Stacking Sats? Small Bitcoin Holders on the Rise, Data Suggests
(編集部より:ビットコインの円換算を修正しました)