米証券取引委員会(SEC)が“全米横断”のツアーを行う。旅の目的は、ふだん金融監督機関と会うこともない仮想通貨やフィンテック領域の起業家たちと会うことだ。
ツアーを計画したのは、テクノロジーベンチャーとのコミュニケーションに専従するSECの部署、フィンハブ(FinHub)。SECの告知によると、フィンハブは米国主要都市を訪れ、トークンの発行やその他SECの監督範囲にある課題に関して、個人やチームがフィンハブのスタッフからフィードバックを得る機会を提供する。
ツアーは2019年3月26日にSECの支部があるサンフランシスコからスタートし、デンバーに向かう。
2018年夏に仮想通貨業界を監督するSECの責任者として就任したバレリー・シュシェパニャク(Valerie Szczepanik)氏も、サンフランシスコへのツアーに参加する。同氏は、フィンハブの職員は法的な助言を行うことはできないが、ベンチャー企業の事業計画などについてガイダンスを行う機会を提供することはできると話す。
これまで、SECが講じた措置は、仮想通貨関連のスタートアップ企業が「証券取引法の違反になるのではないか」と自己申告した後に行われてきた。例えば、グラディウス・ネットワーク(Gladius Network LLC)が未登録の証券を販売したケースは、違法性の認否を行わずに決着。また、同社が自己申告したことを理由に、SECは罰金を課さなかった。
コインアルファ(CoinAlpha)は未登録の証券を発行して資金調達を行い、SECは調査後に5万ドルの罰金を課している。グラディウス同様に、この案件も当事者が肯定も否定もせずままに解決された。SECに対して協力的であれば、罰則は比較的に軽微で済んできた事実がある。
「ローカルP2P」で起業家たちと対話
フィンハブがツアー中に行う起業家たちのミーティングは、「ローカルP2P」と呼ばれ、シュシェパニャク氏は、ローカルP2Pでの対話の重要性を語る。
「SECはこの領域でイノベーションを起こそうとしている人たちと積極的に関わりたいと思っています。私たちとの関わりは、多くの場合、前向きな体験だということを、彼らに知ってもらいたい。みなさんがワシントンDCやニューヨークへ簡単に来れないことはわかっていますので、私がみなさんの地元へ出向きます。他の地域でも同様の機会を作っていきたいと願っています」
2018年10月にフィンハブが設立されて以来、トークンによる資金調達に関して同部署に意見を求めたベンチャー企業の数は、開示されていない。また、3月26日にサンフランシスコで予定される起業家たちとのミーティング数も現在のところ未定だ。実際、これまでにフィンハブにフィードバックを送った企業の数は多くはないだろう。
シュシェパニャク氏は3月11日にこう述べる。
「みなさんが何に困っているかをフィンハブに教えてください。そうすれば私たちは何が問題なのかを知り、有効な規制への反応を踏まえて、どんな対応が必要なのかを知ることができます」
翻訳:Ryo Asai
編集:久保田大海、佐藤茂
写真:SEC(Shutterstock)
原文:The SEC’s Crypto Czar Is Hitting the Road – And She Wants to Meet You