世界46カ国の中央銀行が、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行を検討していることが、新たな調査で明らかになった。
国際決済銀行(BIS)や欧州中央銀行(ECB)などが支援するロンドンの専門メディア「Central Banking」は5月7日、中央銀行デジタル通貨についての調査結果を始めて発表した。回答した中央銀行の65%が、デジタル通貨をすでに積極的に研究していることが分かった。
調査(実施は2月)では、CBDCの基盤としてブロックチェーンを利用する計画があると答えた中央銀行は1行だけだった。「アフリカの小国の中央銀行」と記述された中央銀行が「最も可用性の高いプラットフォームと判断した場合」のみ、ブロックチェーンの利用を検討すると調査報告に記された。
北アフリカのある中央銀行は、ブロックチェーンのセキュリティとスケーラビリティに対して懸念があると述べたという。
また、回答した中央銀行の71%は発行フェーズに達した際には、DLT(分散型台帳技術)を利用してCBDCを構築することを検討していると回答。DLTはより大きなネットワーク・アーキテクチャーを示す言葉であり、ブロックチェーンはDLTの一つに含まれる。
CBDCの発行計画はない
調査報告は、CBDCを研究する中央銀行の大部分が実際の発行計画を立てていないと付け加えた。
分散型台帳技術の種類の一つに、プライベートでパーミッション型のネットワークがある。既知の信頼できる少数のノードによって共有されるネットワークのことだ。調査では、中央銀行は分散化にはメリットとデメリットがあると考えているとしている。
つまり、分散型フレームワークは、単一点障害(single point of failure:SPOF)に対する運用上の回復力がある一方で、プライバシーの問題が存在する。これまで、機密取引データに容易にアクセスできる可能性は指摘されてきた。
調査は、イングランド銀行が3月に公開したCBDC討議資料にも触れた。分散型ネットワークの利用には明らかなメリットがあるが、既存の通貨システムを大きく刷新することになるため、一部の金融機関は準備が間に合わない可能性がある。
今回の調査では、CBDCに対する中央銀行の意向についてさほど大きな驚きはなかったが、変化が進行する可能性を示すものになった。
かつて、分散化は、是か非かといった二律背反的なコンセプトだと考えられてきた。しかし、CBDCの発行を検討している中央銀行はそうは考えていない。各行は分散型で回復力のあるシステムと、ユーザーのプライバシーを保護することの適切なバランス、つまりより優れた折衷案を見つけようとしている。
翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:日本銀行(Shutterstock)
原文:Central Banks Mull Creating a CBDC, but Not on a Blockchain: Survey