暗号通貨のビットコインを採掘するマイニングには、それを行う難易度が設けられている。5月11日にマイニングに対する報酬が半減し、多くのマイナーが撤退を余儀なくされるなか、マイニングの難易度は下方修正された。活動を取り止めたマイナーをネットワークに呼び戻す動きだ。
ビットコインをマイニングする1秒あたりの計算力(採掘速度)をハッシュレートと呼ぶが、この値は11日の半減期直前の約122EH/sから97EH/sまで20%以上低下した。背景には、1秒あたり20エクサハッシュ(EH/s)以上の演算能力が、この日を境にビットコインのネットワークから離脱した事実がある。20エクサハッシュは、旧型マイニングマシンで約150万台分に相当する。
これを受けて、約2週間ごとに調整されるマイニング難易度は5月20日2:00(協定世界時=日本時間20日11時)、半減期後に初めて6%減少し、15.14Tとなった。
ビットコインのマイニング難易度は、ブロックが10分ごとに生成されるよう、2016ブロックごとに調整される。ブロックが生成される間隔が10分よりも長くなると、マイニングの難易度は下げられ、マイナーのネットワークへの参加を促す。
総動員で活動した中国のマイナー
マイニング難易度の2週間ごとの調整サイクルの中間に位置する11日、ビットコインは3度目の半減期を迎えた。
「半減期が近づくにつれ、中国のマイナーは高いマイニング報酬期間を活用するため、旧世代のマシンを使って総動員でマイニングを行っていただろう」と話すのは、ニューヨーク州の天然ガス発電所でマイニングを行うグリーニッジ・ジェネレーション(Greenidge Generation)で、ブロックチェーン戦略ディレクターを務めるケビン・チャン(Kevin Zhang)氏。
マイニングプールのPoolInとF2Poolがまとめたマイナーの収益性データによると、ビットコインの現在の価格と難易度では、旧世代マシンを使うマイナーは1キロワット時あたり0.05ドル以上の電力料金では利益を上げることま難しいという。
一方、マイニング難易度がある程度低下しても、より効率的なマイニングマシンを保有し、安価な電力を調達できるマイナーにとっては持続可能だ。毎日、マイニングされる900ビットコインのうちの大きなシェアを獲ることができる。
PoolInは1日に発表したレポートで、「下位4分の1」のマイナー(1秒あたり25テラハッシュ以下の演算能力を持つ古いマシンに相当)が生み出す演算能力は、ネットワーク全体の15~30%を占めていたと推定する。
雨季を待つ中国のマイナー
「こうしたマイナーのほとんどは半減期後に運用を停止すると考えられるが、安価な電力を調達できるマイナーも出てくるだろう」(同報告書)
鍵を握るのは、水力発電施設の発電コストが低下する中国の雨季だ。夏の雨季が近づくにつれ、同国南西部のマイナーは、1キロワット時あたり0.03ドルという低価格の電力料金で顧客を集めようとしてきた。
半減期後、マイナーに支払われる総取引手数料も上昇傾向にあることがデータで明らかになっている。ブロック報酬とは別に、マイナーはビットコインネットのワークでの各取引に伴う手数料で収入を得ている。
1日あたりの総取引手数料は、4月末の約30ビットコインから160ビットコインに大きく上昇し、現在ではマイナーの1日あたりの収入の約17%を占めている。
「ブロック報酬に対する取引手数料の割合は大幅に上昇している。昨日は当社での取引手数料は4分の1程度になった。今は15~20%のレンジ。今後どう変化して、マイナーのインセンティブに影響を与えるかはわからない」とグリーニッジのチャン氏は述べた。
翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:中国の水力発電所(Shutterstock)
原文:Bitcoin Mining Difficulty Drops by 6% In First Adjustment After Halving