「インドの商業銀行は、暗号資産を取り扱う企業やトレーダーにサービスを提供することができる」同国の中央銀行が明確にした。
インド準備銀行(RBI)は5月22日、「現時点で、そのような禁止事項は存在しない」とする声明を発表。同声明文は、暗号資産(仮想通貨)取引所ウノコイン(Unocoin)・共同創業者のBVハリッシュ(BV Harish)氏からの情報開示法(RTI:Right to Information Act)に基づく問い合わせに対して行われた。
同国報道機関のエコノミック・タイムズ(Economic Times )の26日付の報道によると、25日に提出された問い合わせは、暗号資産トレーダーやサービスプロバイダーに対する銀行サービスの提供が禁止されているかを確認するものだった。
準備銀行の命令を取り消した最高裁
3月4日、インドの最高裁判所は2018年4月に遡って、暗号資産を取り扱う事業者への銀行のサービス提供を制限するインド準備銀行の命令を取り消した。
インド準備銀行は暗号資産取引が銀行システムを危険にさらすと考えていると伝えられ、当初は最高裁判所の判決に異議を申し立てるはずだった。結局、異議申し立ては行われず、暗号資産取引と課税については明確にならなかった。そのため、銀行業界と暗号資産業界の双方に不透明感が残った。
ムンバイにある暗号資産取引所ワジールX(WazirX)の創業者兼CEO、ニスチャル・シェティー(Nischal Shetty)氏は、「最高裁判所の判決は、暗号資産企業に対する銀行業務に制限がないことを明確にしたが、インド準備銀行の情報開示法による回答は大歓迎だ」とした上で、「最高裁判所の判決は出ているが、インド準備銀行からの情報を待っているため、多くの銀行で混乱が生じている」と述べた。
事業拡大するインドの取引所
インドでは、過去数カ月にわたり事業の拡大を進める取引所が見られるようになった。ムンバイの暗号資産取引プラットフォームのコインDCX(CoinDCX)では、3月の1カ月で1日あたりのアクティブユーザー数が倍以上に増えたという。
コインDCX・経営幹部のスミト・グプタ(Sumit Gupta)氏は、「一部の暗号資産企業は銀行のサポートを得ることに問題があったと伝えられたが、コインDCXや他の暗号資産企業は銀行へのアクセスに問題があるということはなかった」と話す。
CoinDeskは3月、顧客がクレジットカードやデビットカードを使って暗号資産を購入することを許可しているかを確認するため、複数の大手商業銀行に取材を試みたが、いまだ返信はない。
翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:インド準備銀行(Shutterstock)
原文:India’s Central Bank Removes Lingering Confusion Over Banking for Crypto Firms