ブラジル小売り大手、ボストンのフィンテックを買収──南米の金融包摂に先進国技術を活用

ブラジルの小売大手ビア・バレージョ(Via Varejo)は、アメリカ・ボストンにあるフィンテック企業のエアフォックス(Airfox)を買収した。

5月22日の発表によると、今回の買収は、銀行サービスを受けることができない数百万人のブラジル人に金融サービスを提供するというビア・バレージョの計画の一環だという。買収金額は開示されていない。

銀行サービスを受けられない多くの人にインターネットを通じて金融サービスを提供しようとする、「金融包摂(フィナンシャル・インクルージョン)」という考えは、民間企業を通じてその必要性が訴えられてきた。また、その課題に直面する国の多くが発展途上にあり、金融インフラは先進国ほどに整備されていない。

2社は既にモバイルバンキングで提携

ブラジルのビア・バレージョとボストンのエアフォックスは、今回の買収前にすでに提携関係を築いていた。2019年6月、2社はマスターカード(Mastercard)と提携して、モバイルバンキングアプリ「banQi」を発表。banQiを使うと、ユーザーはbanQiコミュニティ内だけでなく、マスターカードが使える場所なら世界中のどこでも商品やサービスを購入できるという。

エアフォックスの狙いは「優れたサービス」と共に、無料で銀行口座を提供することだと、同社共同創業者兼CEOのビクター・サントス(Victor Santos)氏は話す。同社のサービスで銀行を利用する人が増えれば、クレジットやその他の金融サービスはより手頃なものになる。

サントスCEOは、「banQiユーザーのスマートフォンやアプリ内での行動から得られるデータを利用して、信用状況を評価し、また信用をデジタルで与えることができる。これは従来の銀行が苦戦していること」と言う。

約35人のスタッフが働くエアフォックスは、買収後もボストンの本社を維持し、「フィンテック・イノベーション・ハブ」としての役割を果たしていく。

ブラジルの約4500万人が銀行サービスを受けられない

エアフォックスは過去に挫折を味わっている。ICO(イニシャル・コイン・オファリング)で1500万ドルの資金を調達したが、米証券取引委員会から証券法違反で告発され、投資家への返金と同委員会への定期報告書の提出、25万ドルの支払いに応じた。

ブラジルの調査会社ロコモティバ・インスティテュート(Locomotiva Institute)の最近の調査によると、ブラジルの人口2億900万人のうち、約4500万人が銀行口座を保有していないか、銀行サービスを受けることができないという。

「Airfoxは、今回の提携でユニークな存在となっている。なぜなら我々は、支店として機能し得るビア・バレージョの1000以上の小売店舗を利用できる、国内唯一のデジタルバンクだ」とサントスCEOは述べた。

翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:ブラジルの風景(Shutterstock)
原文:Brazilian Retailer Eyes Services for the Unbanked With Acquisition of FinTech Firm Airfox