暗号資産(仮想通貨)取引所コインベース(Coinbase)が暗号資産プライムブローカーのタゴミ(Tagomi)を買収する。
プライムブローカー:機関投資家向けに取引の代行など、必要なサービスを総合的に提供する金融事業者。
5月27日に発表された両社の発表によると、買収は今年後半に完了する予定で、買収額などの詳細は明らかにされていない。
「タゴミを当社のサービス群に統合し、機関投資家向け取引事業の将来の基盤を作り上げていく」とコインベースの事業開発責任者シャン・アガーワル(Shan Aggarwal)氏は語った。同氏は今後の展開について、「タゴミはしばらくは運用を続ける。長期的な選択肢については検討している」と加えた。
注目が高まるブローカー業務
コインベースによるタゴミの買収を巡っては、昨年から報じられていた。今回の動きに詳しい関係者によると、買収額は昨年伝えられた1億5000万ドル(約160億円)よりも「かなり低い」という。
現在、機関投資家に流動性やカストディ、融資などを提供する暗号資産プライムブローカーは注目される事業だ。
ジェネシス・トレーディング(Genesis Trading、米CoinDeskの親会社DCGが所有)は最近、プライムブローカーサービスに参入するため、暗号資産カストディアンのVo1tを買収した。ロンドンに拠点を置くデジタルアセット企業のBequantは、今月初めにプライムブローカーサービスを開始し、BitGoも27日にプライムブローカー業務の開始を発表した。
コインベースでは、機関投資家やプロのトレーダーからの取引高が過去3カ月間で倍増しているという。
タゴミの共同創業者マーク・バーガバ(Marc Bhargava)氏は、「銀行や資産運用会社の関心は高まり、タゴミはそうした需要に対応できる製品を構築してきた」と、CoinDeskの取材で述べている。
機関投資家の参入はこれからか
大手ヘッジファンドやマクロ投資家がビットコイン市場への参入を始めようとしているなか、プライムブローカー業は同業界の転換点になるだろう。 一方、伝統的な機関投資家の参入は期待するほど進展はしていないと考え、今回のタゴミ買収は市場が低迷するなかでの統合だとする見方も聞かれる。
ある報道によると、年間約10億ドル(約1080億円)の取引高に対して、タゴミの手数料収入はわずか約100万ドル(約1億800万円)で、同社は新たな機会を求めていたという。
顧客の売買注文を預かるタゴミは、コインベースやバイナンス(Binance)、ジェミニ(Gemini)などの複数の大手暗号資産取引所の取引状況をみて、最も有利な取引を提供する取引所で取引を行うなど、顧客にとって最適な取引を提供することに注力してきた。
コインベースの買収により、利益相反が生じるのではないかとの質問に対して、タゴミのバーガバ氏は、必ずしもそう考えてはいないと回答した。
「我々は顧客に従来どおり、最適な価格設定を提供できると考えている。もちろん、取引所との関係も継続していく。いずれ、どの取引所と仕事を続けるかを開示する」とバーガバ氏は述べた。
翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:コインベースのブライアン・アームストロングCEO(CoinDesk archives)
原文:Coinbase Buys Tagomi as ‘Foundation’ of Institutional Trading Arm