イーサリアムクラシック(ETC)は、 5月31日に1050万839ブロックで実行されたネットワークアップグレード「フェニックス(Phoenix)」により、イーサリアム(ETH)と完全な互換性を持つようになった。
だがそれは、暫定的に2020年第3四半期とされているイーサリアムの全面的なアップグレード「イーサリアム 2.0」によって、イーサリアムがコンセンサスアルゴリズムを変更するまでの話だ。
イーサリアム 2.0は、イーサリアムクラシックにとって大きな出発点となる。イーサリアムがプルーフ・オブ・ステーク(PoS:Proof-of-Stake)に移行する一方で、イーサリアムクラシックはプルーフ・オブ・ワーク(PoW:Proof-ofWork)を堅持している。
PoSとPoW
2016年に起きたハッキングをめぐる解釈の違いは、イーサリアム開発者に分裂を生み、論争の絶えないハードフォーク(暗号資産の互換性のない分岐)を招くことになった。
以来、イーサリアムクラシックは、より大きな開発者ネットワークを誇るイーサリアムに追いつこうとしてきた。
「イーサリアムクラシックは、十分に試行錯誤されてきたPoWにこだわっていく」と話すのは、ETCラボ(ETC Labs)のテリー・カルバー(Terry Culver)CEO。「我々は(PoWの)機能に満足している。時間が経てば、課題に対処できる」
フェニックスは、イーサリアムクラシックでこの1年間で行われた3度目のアップグレード。2019年12月に行われたイーサリアムの最新のアップグレード「イスタンブール(Istanbul)」に対応したものだ。
フェニックスの前には、アガルタ(Agharta)とアトランティス(Atlantis)の2つのアップグレードが行われた。どちらもイーサリアムとの相互運用性を高めることが目的だった。
コンポーザビリティ
イーサリアムクラシックはイーサリアムの後を追うのではなく、イーサリアムに近い存在になっている。
チェーン間のコンポーザビリティ(構成要素を組み合わせたり、組み替えたりできること)が、イーサリアムクラシックのコミュニティを「イノベーションを促すもにしていきたい」とカルバーCEOは述べる。
方向性としては、イーサリアムクラシックは、現代のコンピューター技術の発展と同様に、イーサリアムのエコシステムにおけるベースレイヤーとして機能していくと、ETCコーポラティブ(ETC Cooperative)のエグゼクティブディレクター、ボブ・サマーウィル(Bob Summerwill)氏は話す。
イーサリアムと併存
イーサリアムとイーサリアムクラシックは併存していく。つまり、エンタープライズ・ブロックチェーンツールやDeFi(分散型金融)アプリなどの同じようなサービスをサポートするが、イーサリアムクラシックは、それらをPoWのメカニズムでサポートしていく。
「ユニックス(Unix)があり、次にリナックス(Linux)が生まれ、さらにiOSが生まれた。イーサリアムでも似たようなことになる可能性が高いと考えている。つまり、互換性の違いはあっても、イーサリアムに似たソリューションがきわめてたくさん生まれるだろう」とサマーウィル氏は述べた。
翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:ETCコーポラティブのボブ・サマーウィル氏(CoinDesk archives)
原文:Hard Fork Sets Stage for Ethereum Classic’s Second Major Departure From Ethereum