気候変動に動くGAFAM:マイクロソフトは炭素市場にブロックチェーン、アマゾンは20億ドルファンド

アメリカのテックジャイアントが気候変動に対応する動きを強めている。

マイクロソフトは22日、炭素排出権市場の構築にブロックチェーンを活用することで得られる潜在的メリットを、ドイツとデンマークの大学と共同で論本にまとめ、発表した。翌23日には、アマゾン・ドット・コムが気候変動の影響を軽減する技術などに特化した、20億ドル規模のベンチャーキャピタルファンドを組成することを明らかにした。

パリ協定の目標は、気候変動の脅威に対する世界的な取り組みを実現すること。具体的には、世界の平均気温の上昇を産業革命以前のレベルから2℃以下に抑えるという目標を掲げている。

カーボン市場の設立にブロックチェーン

マイクロソフトとベルリン工科大学、デンマーク工科大学の論文では、「パリ協定炭素市場メカニズムへのブロックチェーン適用──意思決定フレームワークとアーキテクチャ(Blockchain Application for the Paris Agreement Carbon Market Mechanism – A Decision Framework and Architecture)」は、パリ協定第6条2項で定められた炭素市場メカニズムへのブロックチェーンと分散型台帳技術の適合性を具体的に検討している。

第6条2項は、国際的な排出量取引制度(大気中に放出される二酸化炭素量を削減するための市場インセンティブの一種)について、中央集権的ではない協調的な会計方式の提供を目指している。

2005年の京都議定書で規定されたような古いインフラソリューションは、「中央集権的で断片化したデータ構造」での手作業に基づいているため限界があると、論文には記されている。

「古いデータベース構造だけを考慮した場合、“新しく”設計したはずのポスト2020年の市場メカニズムは、すでに開始日には時代遅れになっているリスクがある」

ブロックチェーンの特性を活かす

論文の作成には、マイクロソフトのデータ・AI・ブロックチェーン・クラウドサービスのスペシャリストであるローラ・フランケ(Laura Franke)氏が加わった。著者らは、ブロックチェーンが持つ情報の透明性と不変性が実現可能な代替案を提供できると考えている。

「パリ協定で描かれているボトムアップの分散型統治システムには、ブロックチェーンの適用が有望で、透明性の向上と自動化の推進というメリットをもたらすことができる」

だが、ブロックチェーンと分散型台帳システムは、炭素市場の問題をすべて解決できるものではなく、「ブロックチェーン技術を適用する際のメリット/デメリットを個別に評価する必要がある」としている。

出典 : Blockchain Application for the Paris Agreement Carbon Market Mechanism

それでもブロックチェーンプラットフォームの利用は「他の新技術との相互運用性、スマートコントラクトによるプロセスの自動化、透明性、トレーサビリティ、監査可能性の強化、システムのセキュリティと参加者間の信頼性の強化において明確なメリットを提供する」と、論文には記された。

一方、アマゾンの気候変動対策ファンドは、「クライメート・プレッジ・ファンド(Climate Pledge Fund)と名づけられ、輸送や製造業、農業、食品、エネルギー分野における企業に投資を行っていくという。アマゾンは今後、同ファンド規模を拡大する可能性もある。

GAFAMは、Alphabet社(Google)、Amazon、Facebook、Apple、Microsoftのこと。

翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:Oil refinery (Susan Santa Maria/Shutterstock)
原文:Microsoft, EU-Based Universities Say Blockchain Could Help Meet Paris Agreement Carbon Goals