AMDとコンセンシス出資のデータベンチャーが20億円超を「GPU」に費やす理由

イーサリアムスタートアップのコンセンシス(ConsenSys)と大手半導体メーカーのAMDが共同出資したデータセンターベンチャーのW3BCLOUDは、GPU数を3倍にするために2000万ドル(約21億5000万円)の資金を投入する。

GPUとは:Graphics Processing Unitの略で画像処理装置のこと。

暗号資産(仮想通貨)分野では「データセンター」という用語は通常、マイニング施設を表す。しかしW3BCLOUDにとっては、それだけではないようだ。

共同創業者のワエル・アブリーダ(Wael Aburida)氏とサミ・イッサ(Sami Issa)氏は、ワシントン州にあるデータセンターのGPUを増強するために、シードラウンドの最初の段階で調達した2050万ドルを費やしていると、CoinDeskの取材で明らかにした。

W3BCLOUDは現在、6000台のGPUを運用しているが、今回の2050万ドルの投資によって、その3倍以上の2万台のGPUを運用できるようになる。

「我々は、資本の90%以上をコンピューターリソースの整備に使っている。顧客ニーズに対応できる能力を確保できるようになる」(アブリーダ氏)

分散型コンピューティングインフラの根幹

W3BCLOUDは昨年に創業、ロンドンに拠点を置き、コンセンシス創業者ジョー・ルービン(Joe Lubin)氏と、チーフスタッフのジェレミー・ミラー(Jeremy Millar)氏が取締役を務めている。

GPUはブロックチェーン分野では通常、暗号通貨のマイニングに使われているが、汎用性が高く、トラフィックの処理、ネットワークストレージの増強、レイテンシー(遅延時間)の改善などさまざまな用途に使うことができる。また、Web3や分散型金融(DeFi)などの新分野にも活用できると言われている。

つまり、GPUは新しい分散型コンピューティングインフラの根幹となる。だが共同創業者の2人は、具体的な内容と今後の取り組みについてのコメントを控えた。

「今後、詳細を語れるようになるだろう」とイッサ氏は、データセンターは分散型AI(人工知能)や分散型VR(バーチャルリアリティ)のような、これまでに聞いたことのないような、より幅広い分散型機能を促進するためにも使えると強調した。

「我々は自らを分散型コンピュータインフラと捉えている。ブロックチェーンはそのユースケースの1つ。我々は最高のコンピューターと最高のブロックチェーン人材にアクセスでき、魅力的なユースケースに必要なコンピューターインフラを構築していく」

初期プロジェクトのホワイトナイト

同社はまだシードラウンドの途中で、3000万ドルの資金調達を目指している。これまでのところ、コンセンシスとAMDのほか、アラブ首長国連邦のファミリーオフィスからも資金を調達している。

ファミリーオフィスとは:超富裕層の個人や家族の流動資産を一括して管理する専用の資金運用サービス。

資金の一部は、EUでの新しいデータセンター設立にも使われる。

「名前は出せないが、あるヨーロッパの顧客が当社の進出を望んでいる」(イッサ氏)

アブリーダ氏によると、同社には複数の政府系ファンドも関心を寄せているという。機関投資家向けラウンドは2021年に計画しているが、調達目標は「まだ決まっていない」

W3BCLOUDは、他のプルーフ・オブ・ワーク(PoW)ブロックチェーンにも関心を持っている。

アブリーダ氏によると、多くのブロックチェーンは初期段階に多くのユーザーを集めることに苦戦しており、同社のデータセンターは「ホワイトナイト」として機能し得る。プロジェクトに重要なコンピューティングパワーを提供し、いわゆる「51%攻撃」(ネットワークの演算能力の半分以上を乗っ取り、トランザクションを書き換える攻撃)を防ぐことができる。

計画はまだ完全には具体化されていないが、「重要なポイントはGPUの数の面で巨大なプレーヤーになるということ」とアブリーダ氏は語った。

翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:Shutterstock
原文:AMD-Backed Blockchain Project Amassing 20K GPUs But Won’t Say Why