国際決済銀行(BIS:Bank for International Settlements)は今後2年間で欧米5都市に「イノベーション・ハブ」のサブ拠点を開き、これまで進めてきた貨幣の未来についての研究活動を拡大する。
6月30日の発表によると、サブ拠点が開かれるのはトロント、ストックホルム、ロンドンの3都市。パリとフランクフルトは共同拠点となる。デジタル通貨や分散型台帳技術(DLT)、サイバーセキュリティ、AI(人工知能)、デジタル決済などの中央銀行が抱える課題に関する研究施設になると、イノベーション・ハブの責任者ブノワ・クーレ(Benoît Cœuré)氏はプレスリリースで述べた。
「中央銀行のための中央銀行」と呼ばれるBISはまた、イノベーション・ハブと米FRB(連邦準備制度理事会)との戦略的パートナーシップ提携も発表した。
ステーブルコイン、CBDCの研究も拡大
BISは昨年、加盟する62の中央銀行と共同で国際的な技術協力体制を構築するためのビジョンを発表。今回の拠点拡大はフィンテックを育成するというBISの多面的な取り組みをより強固にするものだ。
また、BISはこれまでに法定通貨に連動するステーブルコインや中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する調査をイノベーション・ハブに命じている。
カナダ銀行とスウェーデン国立銀行はCDBCの研究を強化しており、フランクフルトに本部を置く欧州中央銀行(ECB)は今年1月、CDBCの研究を進めるために、BISと4つの中央銀行で構成されるリサーチグループに加わった。
1年前に始まったイノベーション・ハブ構想は、その研究活動領域を地理的に広げてきた。30日の発表によると、イノベーション・ハブにはユーロ圏全域、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、アイスランド、カナダ、イギリス、アメリカ、香港、シンガポール、スイスなど、すでに自国に研究拠点を持つ国も参画するという。
「BISイノベーション・ハブは中央銀行と金融システムの未来への投資。新たな拠点はこの取り組みを拡大し、フィンテック・イノベーションに向けた世界的な力を生み出していく」とBISのアグスティン・カルステンス(Agustin Carstens)総支配人は声明で述べた。
翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:イノベーション・ハブの責任者ブノワ・クーレ(Andrej Klizan/Flickr)
原文:BIS Plans New Central Banking Fintech Research Hubs in Europe, North America