中国のSNS「Weixin(微信)」に公開された9日付の記事によると、中国公安部は温州市警察が詐欺の容疑者10人を逮捕したことを明らかにした。公安部によると、スマートコントラクトを使って暗号資産を作成すると謳った中国では初の事件だという。
警察当局が容疑者らから押収した資産は総額1500万ドル(約16億円)にのぼった。押収物には暗号資産(仮想通貨)のビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)、テザー(USDT)の他に、高級車のフェラーリとマクラーレン、豪華別荘が含まれていた。
事件は4月に被害者の1人が警察に届け出たことで発覚。被害者はメッセージングプラットフォーム「テレグラム(Telegram)」上のグループ「フォビ(Huobi)グローバルアービトラージ HT 中国コミュニティ」に参加していた。
テレグラムのメッセージグループを悪用
被害者によると、このグループは暗号資産取引所フォビの独自トークン「フォビトークン(HT)」を生成できるスマートコントラクトをアピールし、裁定取引で8%のリターンが得られると謳っていたという。
「指示されたアドレスに1イーサリアムを送信すると、60HTを受け取ることができる。受け取り後にHTを売って差額を稼ぐ」と被害者は警察に話したと伝えられた。
公安部の報告書によると、フォビトークンの価格は7月3日時点で4ドル、イーサリアムは227ドル。仮に被害者が同日に1イーサリアムを送信すれば、13ドルを利益として取得することができる。
実際、被害者が指定されたアドレスに10イーサリアムを送信した後に受け取った600HTは偽物で、売却するこができなかった。
フォビが今回の詐欺事件に関与していたことを示すものはなにもない。
中国が動き出した暗号資産の犯罪摘発
容疑者らは1万以上の偽アカウントを使って数十の似たグループを作り、被害者らに合法的な裁定取引のチャンスだと信じ込ませていたようだ。
数万イーサリアムを受け取った後、主犯のチェン、ユウ、シュウの3人は稼ぎを別荘やスポーツカー、ナイトクラブなどにつぎ込んでいたと公安部は述べた。
警察は、この事件は中国における新しいタイプの犯罪だと認めた。容疑者の居場所を特定した方法は明らかにされていない。事件に関連した取引を追跡するためにオンチェーン分析を行ったか否かも分かっていない。
中国の警察当局は過去数カ月、オンラインギャンブルやマネーロンダリング、経済詐欺などの違法行為に関与する可能性のある暗号資産取引の追跡に力を入れている。
6月以降、中国のOTC(相対取引)トレーダーは保有資産(法定通貨や暗号資産)がこうした違法行為に関連しているとして、銀行口座が凍結されるケースが起きている。
翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:Efired/Shutterstock
原文:Ferrari, McLaren and $15M in Crypto Seized as Chinese Police Bust Arbitrage Scam