電子書籍の管理にブロックチェーン技術と暗号技術を活用し、利用者が電子書籍を二次流通市場で(紙の本でいう古本として)売ることができる仕組みができるかもしれない──。
ブロックチェーン技術を活用したコミュニティサービス・プロダクトの共創プラットフォームを開発しているGaudiyと、セプテーニ・ホールディングス子会社でマンガアプリ「GANMA!(ガンマ)」を手がけるコミックスマートが7月14日、業務提携したことを発表した。具体的には、電子書籍をNFT(ノンファンジブル・トークン)として発行するなどブロックチェーンと暗号技術を利用、ユーザーが電子書籍データを“所有できる”事業の実証実験の今夏行う。
電子書籍で買うのはデータの「所有権」ではなく「閲覧権」
現在、流通している電子書籍の多くは、書籍の「データ自体」ではなく「読める権利」を購入する仕組み。これはデータの不正コピーを防止するためで、権利はDRM(Digital Rights Management:デジタル著作権管理)で閲覧・コピー制限が管理されている。
リリースによれば、DRMは電子書籍を提供する事業者ごとに独自の仕様が使われているため、ユーザーは、事業者が指定した端末やビューアー上でしか閲覧ができないし、不要になっても中古として売ることができない。事業者がサービスの提供を終了すると閲覧できなくなる可能性もある。
NFTを活用、二次流通での収益を権利者に還元する仕組みも
Gaudiyなどの取り組みでは、書籍を「データ所有型電子書籍」と位置づけ、NFT(ノンファンジブル・トークン)として発行する。これにより、データの不正コピーを防ぎつつ電子書籍を“所有”できるほか、不要になった場合には紙の書籍と同様に売ることができる。
構想では、電子書籍が二次流通市場で売買された場合でも、権利保有者(出版社、作者など)に収益が還元される仕組みも実現するという。
NFTを活用することで、「電子書籍内のコンテンツにのみ作者のサインをつける」「初版で購入した人限定の書籍を販売する」「本編の内容を販売後に追加・変更していく」ということも可能になると見られている。
電子書籍市場は4年で2倍の3000億円に。規模は紙の4分の1
電子書籍市場の規模は、2019年のデータで3072億円(前年比23.9%増)だ。これは全国出版協会・出版科学研究所によるデータで、3000億円を突破したのは初めてという。内訳は電子コミックが2,593億円(同29.5%増)、電子書籍が349億円(同8.7%増)、電子雑誌が130億円(同16.7%減)だ。
同研究所の分析では、電子雑誌が減ったのは定額制読み放題サービス「dマガジン」の会員数の減少が続いたことだという。ただコミックが大きく伸びたため、前年比で20%以上の伸びを達成している。
なお紙の出版物(書籍・雑誌合計)は、1兆2,360億円(前年比4.3%減)。電子書籍の4倍の規模だが、15年連続のマイナスだ。
個別に見ると電子書籍が大きく伸び、紙の出版物は年々少しずつ減っているが、両方を合算してみると、全体では市場規模は小さくなっている。2015年には全体(紙+電子)で1兆6722億円だったのが、2019年には1兆5432億円。この4年で1290億円減少している。同じ期間に電子書籍は1502億円から3072億円に増えているから、4年で1570億円増えた計算だ。電子書籍は伸びているものの、紙の出版物が減っており、全体では出版市場は縮小傾向にある。
文・編集:濱田 優
画像:Voyagerix / Shutterstock.com
(編集部より:タイトルの社名に誤りがありました。訂正して記事を更新しました)