暗号資産(仮想通貨)取引所に移動した不正が行われた疑いのある暗号資産は、2020年上半期で約14億ドル(約1500億円)だった。ブロックチェーン分析企業ペックシールド(PeckShield)が公開した調査報告書で分かった。
ペックシールドの7月14日付の報告書によると、同社が分析した暗号資産はビットコインやイーサリアムなどの市場規模でトップ5の通貨で、1億件以上のブロックチェーンアドレスを1年間にわたって追跡した。
追跡したアドレスの中には、出資金詐欺に関与した暗号資産やダークウェブで取引されたものから、ハッキングされた通貨や違法のオンラインギャンブルに関係する暗号資産などが多数含まれていたという。
同報告書によると、14万7000ビットコインを超えるさまざまな暗号通貨が世界中の取引所のウォレットに保管されている。
フォビ、バイナンスなど人気取引所に流入
さらにペックシールドは16日に追加レポートを発表し、不正疑いの暗号資産の大部分が、フォビ(Huobi)やバイナンス(Binance)、オーケーエックス(OKEx)などの人気の取引所に移動したと述べている。
「不正が行われた疑いのある暗号資産の流入問題は、完全な規制下にはない。マネーロンダリング対策は重要な問題として考えられているものの、実際には効果的な追加施策の導入は不十分である」(レポート)
FATF(マネーロンダリングに関する金融活動作業部会)はこれまでに、暗号資産企業向けの、いわゆる「トラベルルール」の厳格な施行を促している。
トラベルルール:VASP(暗号資産交換事業者)などの金融機関が国外送金を取り扱う際、送金者の氏名や、口座番号、住所等の情報を相手先の金融機関に送信しなければいけないというもの。
不正疑いの暗号資産の問題は最近、中国の店頭取引(OTC)市場に影響を与え、多くの銀行口座が警察当局によって凍結される事態を招いた。
ペックシールドによると、同社が追跡した1億件のブロックチェーンアドレスのうち、5300万件以上は取引所が保有している。ビットコインのアドレスで最も多いのは、コインベースの1800万件。次いでバイナンスが542万件となっている。
また監視しているアドレスの中では、コインベースが最も多い110億ドルの暗号資産を保有。フォビ(58億ドル)、バイナンス(34億ドル)、ビットフィネックス(30億ドル)、オーケーエックス(25億ドル)が続いている。
翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:PeckShield
原文:$1.4B in ‘High-Risk’ Crypto Flowed Onto Exchanges in H1 2020, Analysis Firm Says