骨太の方針で「中央銀行デジタル通貨」に初めて言及、2020年度版が閣議決定──日銀にはプレッシャー?

2020年度の「経済財政運営と改革の基本方針」が7月17日閣議決定され、初めて中央銀行デジタル通貨(CDBC)について言及された。具体的には、「中央銀行デジタル通貨については、日本銀行において技術的な検証を狙いとした実証実験を行うなど、各国と連携しつつ検討を行う。」とわずか1文だが、原案が報じられた際にはなかったもの。

野村総研エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は、同社サイト内のブログで、香港国家安全法が施行されて中国に対する警戒感が与党内、政府内で高まったことが理由の一つではないかとした上で、「日本銀行には強いプレッシャーとなることは間違いない」と指摘した。

骨太の方針2020のポイントはコロナ禍・防災対策

骨太の方針2020は副題に「危機の克服、そして新しい未来へ」と掲げられた全37ページの冊子で、第1章「新型コロナウイルス感染症の下での危機克服と新しい未来に向けて」から始まり、第2章「国民の生命・生活・雇用・事業を守り抜く」、第3章「『新たな日常』の実現」と続く。

中銀デジタル通貨については、第3章の5項「新たな世界秩序の下での活力ある日本経済の実現」に挙げられた次の4つの方針(1〜4)のうち、(3)「サプライチェーンの多元化等を通じた強靱な経済・社会構造の構築」(36ページ目)で言及されている。

(1) 自由で公正なルールに基づく国際経済体制
(2) 国際協調・連帯の強化を通じた新たな国際協力
(3) サプライチェーンの多元化等を通じた強靱な経済・社会構造の構築
(4) 持続可能な開発目標(SDGs)を中心とした環境・地球規模課題への貢献

今回の骨太の方針の焦点は、副題や1章のタイトルなどから分かるとおり、新型コロナウイルスや激甚化・頻発化する災害への対策だ。感染症拡大への対応と 経済活動の段階的引上げに取り組むとされたほか、コロナ禍を経た新たな日常を実現するための施策として、デジタル化への集中投資(デジタルニューディール)や東京一極集中型からの脱却、課題設定・解決力や創造力のある人材の育成(教育改革、リカレント教育の推進)などが挙げられた。

しかし、コロナ・防災対策に多額の予算を費やすことにしたことから、従来の方針だった、2025年度に国・地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化するという財政健全化の目標や、成長戦略でも掲げられていた20年ごろの名目国内総生産(GDP)600兆円といった目標については触れられなかった。

日本円のデジタル通貨は実現するのか?

中銀デジタル通貨については、日本銀行は以前、発行の予定はないという姿勢だった。しかしその日銀は7月2日、技術的課題についてまとめたレポート「中銀デジタル通貨が現金同等の機能を持つための技術的課題」を発表している。

この中で、「⽇本銀⾏としては、実証実験等を通して、技術⾯からみた実現可能性(フィージビリティ)を確認していく」として、実証実験をする可能性も示唆していた。

このほかCBDCをめぐる動きとしては、G20が現金に代わる決済手段として「デジタル通貨」を使ったマネーロンダリング(資金洗浄)の防止など規制論議を10月に本格化させる見通しであることを、共同通信が報じている。

報道によれば、G20は従来、フェイスブック・リブラの影響力への懸念から民間の動きをけん制してきた。しかし、各国の中央銀行の導入計画も加速してきたため方針を転換したという。今秋以降、CBDCについて国際会議の場で議論が一気に進むと見られる。

文・編集:濱田 優
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