中央銀行デジタル通貨(CBDC)発行に対する機運が世界中で高まる中、日本銀行は7月20日、決済機構局決済システム課に「デジタル通貨グループ」を設置した。グループ長は審議役の奥野聡雄(おくの・あきお)氏で、所管は「決済システムのデジタル化および中央銀行デジタル通貨に関する事項」となっている。
政府は7月17日、2020年度の骨太の方針を閣議決定しており、初めて中央銀行デジタル通貨について言及。「日本銀行において技術的な検証を狙いとした実証実験を行うなど、各国と連携しつつ検討を行う」との表現で、日銀に取り組みを求める姿勢を明確にしたばかり。
奥野審議役がグループ長に就任
奥野氏は1993(平成5)年入行、金融市場局市場調節課長や企画局政策企画課長、高知支店長などを経て2020年7月20日付けで決済機構局の審議役に就いた。奥野氏が率いるデジタル通貨グループは、報道によれば10人程度の組織になると見られる。
同課内にはほかに、FinTechセンターフィンテックグループ(グループ長・菅山靖史企画役)、決済システム調査グループ情報技術標準化グループ(ISO/TC 68 国内委員会事務局、グループ長・橋本崇企画役)など全6グループがあるが、他の5つのグループ長は企画役が務めている。今回、格上の審議役を就けたあたり、本気度を示したいという考えの現れなのかもしれない。
中銀デジタル通貨をめぐる動きでは、最近、英国やタイなどで開発の取り組みが進んでいると報じられているが、特に政府・与党内で警戒感が高まっているのが中国のデジタル人民元構想だ。日銀は従来、CBDCに対して積極的ではなかったが、7月17日に閣議決定された「骨太の方針2020」では原案になかったデジタル通貨への言及が盛り込まれたほか、今回日銀が専門グループを設置したことから、日本でもCBDC研究の動きが一気に速まりそうだ。
文・編集:濱田 優
画像:Leonid Andronov, metamorworks