クレジット大手のVisaが7月22日、自社のブログでデジタル通貨についての取り組みと考え方について紹介する記事を公開した。「秘密鍵で管理された現金のデジタル版」であるデジタル通貨について、「デジタル決済の価値をより多くの人や場所に広げる可能性を秘めている。デジタル通貨が将来の貨幣のあり方を形成し、その役割を支援したい」などと述べた。
世界25以上のデジタル通貨ウォレットとリンク
記事では、デジタル通貨について、10年以上前にビットコインの登場で生まれたこと、「ステーブルコイン」がデジタル通貨の利点と法定通貨の安定性を組み合わせた、有望な新しい決済手段として登場したことなどに言及。デジタル通貨の流通量が5月には100億ドル以上に達していると報告した。
また同社の取り組みとして、暗号資産取引所Coinbaseやビットコイン決済アプリのFoldなどと提携、世界25以上のデジタル通貨ウォレット(編:暗号資産ウォレットを含むものと思われる)がVisaにリンクしていることなどを紹介した。
またデジタル通貨エコシステムのためのセキュリティインフラを構築しているアンカレッジ社に投資したことや、研究チームが開発した技術として、「Zether」や「FlyClient」を紹介した。
「Zether」はVISAの研究チームが開発したプライバシー保護のための決済メカニズムで、JPモルガン・チェースが自社のブロックチェーンで採用する計画を発表している。一方の「FlyClient」は、モバイルデバイスでブロックチェーントランザクションを簡単に検証するためのフレームワーク。
また研究チームが現在注力しているのは、スケーラビリティの向上と、オフラインでのデジタル通貨取引を可能にするメカニズム開発にだという。
CBDCを模索する中銀にも政策提言を実施
記事は技術面や投資に関してのみならず、政治・行政との連携についても言及。政治家や行政・規制当局は、消費者保護や決済の安定性などさまざまな点についてデジタル通貨に疑問や懸念を持っていると指摘した。
その上で、最善の対処法として、業界のリーダーである大手企業と公共部門が密接に連携することを挙げた。同社としても、その一環として政策立案者や世界的な組織と連携し、デジタル通貨に関する対話と理解の形成を支援してきたことを紹介。そこには、世界経済フォーラムとの連携や、中央銀行デジタル通貨(CBDC)について模索している中央銀行への政策提言への協力も含まれるとした。
最後に、同社のデジタル通貨戦略として3点を挙げた。
1 セキュリティ、プライバシー、完全性、信頼(データ保護、消費者のプライバシーと公平性、適用されるすべての法律を完全に遵守する)
2 通貨とネットワークにとらわれない姿勢の維持(より広範にネットワーク同士をつなげるネットワークになるために=ネットワーク・オブ・ネットワーク戦略=、顧客やパートナーが求めるデジタル通貨とブロックチェーンネットワークをサポートする)
3 Visaのコア機能との連携(トランザクションデータの安全性確保、多様なステークホルダーとの連携、継続的な可用性を備えた常時稼働のネットワークの維持──これらに関する深い専門知識を新しいネットワークや技術に応用し、顧客やパートナーに利益をもたらすプロジェクトを追求する)
文・編集:濱田 優
画像:VISA米国サイトより