暗号資産、仮想通貨、セキュリティトークン……表記・定義が乱立する「デジタル資産」を3分類して整理──国内外の公文書用語

(本記事はbtokyo membersのリサーチノートから一部を抜粋・編集したものです)

2020年5月、ビットコインなど「仮想通貨」と呼ばれてきたデジタル資産は日本の法律上「暗号資産」と定められた。一方、同じくブロックチェーン技術を基盤としつつも有価証券としての性格を持つ「セキュリティトークン」や「デジタル証券」は法律上、「電子記録移転権利」として正式に区別されることとなった。

さて既に5種類の呼び方(仮想通貨、暗号資産、セキュリティトークン、デジタル証券、デジタル資産)が登場したが、世界に目を向けると、分散型台帳技術、ブロックチェーンを用いた資産に関して、さらに様々な表現が乱立している。

それぞれの国(地域)や機関の公的⽂書ではどのような⽤語が使われているのか整理してみよう。

大別すると3タイプ

各国・機関の公的文書を参照すると、それぞれ呼称は異なるものの、デジタル資産を3通りに大別して定義する傾向が世界的に確認できる。

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3つのタイプは表にあるとおり、「決済手段として用いられるもの」「金融資産や関連する権利を表章するもの」「特定の消費を目的としたり、会員権的な性格を帯びていたりするもの」だ。

それぞれの特徴と、各国の事例の中でもイギリスの例と欧州証券市場監督局(ESMA)での取り扱いについて見ていこう。イギリスは公的文書においてデジタル資産への言及を最初期から行ってきた国の一つであり、また欧州証券市場監督局による定義は、世界的に有価証券のデジタル化に注目が集まる中、参照に値するだろう。

タイプ1 決済手段

ビットコインが代表例だが、これまで日本でも「仮想通貨」と呼ばれることが多い。

イギリスでの定義例:Exchange Token

分散型台帳プラットフォームを活用し、中央銀行による発行や保証をされず、交換手段や投資に用いられる。ビットコインなど”Crypto Currency”と呼ばれるものを指す。

欧州証券市場監督局による定義例:Payment Token

モノやサービスを購入するための決済手段となり、文字通りの仮想的な通貨。所有者が発行者に対して何か権利を有する性質はない(例:ビットコイン)。

タイプ2 金融資産や関連する権利の表章

日本でも「セキュリティトークン」や「デジタル証券」などと呼ばれている。

イギリスでの定義例:Security Token

所有権、特定の返済金、将来の利益配分などの「権利」をもたらし、取引可能な有価証券または金融商品になり得る。

欧州証券市場監督局による定義例:Asset Token

発行者に対する権利を表章した資産。たとえば、企業の将来の収益やキャッシュフローについての持ち分が約束される。そのため、経済的機能という観点からは、株式、社債、デリバティブに類似する

タイプ3 特定の消費目的または会員権的な性格

このタイプは「ユーティリティ・トークン」という呼称が支配的だ。

イギリスでの定義例:Utility Token

分散型台帳プラットフォームを用いて、特定の製品やサービスを得るために使用される。

欧州証券市場監督局による定義例:Utility Token

特定のアプリケーションやサービスへのアクセスを付与するためのものであるが、決済やその他の手段としては受容されない。

「Crypto Asset=暗号資産」ではない。各国の「デジタル資産」の把握を

欧米に先駆けて法整備が進んだ日では、主だった分類として資金決済法上の「暗号資産」と金融商品取引法上の「電子記録移転権利」がある。

やっかいなのは、たとえば「暗号資産」を直訳して”Crypto Asset”としても、英語の”Crypto Asset”は日本語の「暗号資産」と必ずしも同義とはならない点だろう。また、同じ”Crypto Asset”という語句も国によって意味する範囲が異なり、混乱の種となりかねない。

国際的に統一されることが望まれるが、まずは現状において各国が「デジタル資産」に対してどう認識し、定めているかを把握しておく必要があるだろう。

文:btokyo members
編集:CoinDesk Japan編集部
画像:N.Avenue