2020年5月に改正法が施行され、今後のビジネス化に期待が集まっているST(セキュリティトークン)と、STを使った資金調達手段であるSTOについて、8月24日に始まったブロックチェーン国際イベント「BG2C FIN/SUM BB」でもセッションが設けられた。マネックスグループの松本大・代表執行役社長CEOが登壇、金融庁など当局に対して「セーフハーバーかサンドボックスをぜひ設置して欲しい」と要望し、規制よりもまずビジネス化に向けた環境づくりをすべきとの考えを示した。
金融庁と日本経済新聞社主催のこのイベントは、国際会議Blockchain Global Governance Conference (BG2C)、FIN/SUM Blockchain & Business (FIN/SUM BB)の同時開催で、3月に予定されていたが、コロナウイルス感染拡大のために延期され、8月24日、25日の開催となった。
松本氏「証券業協会は逃げてしまった」
午後に行われたセッション「花開くか日本のSTO、金商法改正で本格スタート」では、タイトルどおりセキュリティトークンを活用した資金調達法であるSTO(セキュリティ・トークンオファリング)の見通しや、市場をつくる上での課題などについて話し合われた。
松本氏のほか、SBIホールディングス執行役員 ブロックチェーン推進室長で、SBI R3 Japan 代表取締役の藤本守氏、三菱UFJ信託銀行経営企画部の田中利宏FinTech推進室長、野村ホールディングスなどが設立したBOOSTRYの佐々木俊典代表取締役社長が参加。モデレーターは、日本経済新聞社編集委員で、テレビ東京系ワールドビジネスサテライトにも解説キャスターとして出演している滝田 洋一氏が務めた。
松本氏はまた、日本証券業協会が暗号資産デリバティブ取引やセキュリティトークンについて自主規制対象から外したことを念頭に、「証券業協会は逃げてしまった」と批判。規制ありきではなくまず市場参加者に任せるべきとの考えを示し、例として10万円までなら対象が何であっても認めるといったセーフハーバー(事前に決めた範囲ないであれば違法ないし違反にならないとされる基準)を設けることを提案。その上で、「大きく伸びそうなら、それにあった規制を考えればいい」などと述べた。
さらに米国や中国はそうした考えで、特に米国は社会の枠組みがイノベーションを利用する方向に進んでいると評価する一方、日本はそうではないと指摘。「たとえば何がセキュリティ(有価証券)なのかは時代によって変わる」と述べるなど、時代の変化に置いていかれないようにするための思い切った施策こそがイノベーションに必要との考えを示した。セッションの最後には、当局に対して、セーフハーバーまたは(規制の)サンドボックスの設置を提案した。
SBI藤本氏「ルールは最低限にして市場参加者に任せて」
SBIホールディングスの藤本氏も、投資家保護の重要性は認めつつもこうしたアイデアに賛同。2017年の資金決済法はもっと自由だったと述べ、ルールは最低限にして市場参加者に任せる方法が重要との考え方を示した。
野村ホールディングスと野村総研が設立した合弁会社で、ブロックチェーンを活用したセキュリティトークン(デジタル証券)の発行プラットフォームを開発している株式会社BOOSTRYには、SBIホールディングスも出資することが7月22日に発表されたばかり。佐々木ブーストリー社長は、自社のプラットフォームibetについて紹介。セッションの最後にはセキュリティトークンがまだビジネスとして立ち上がっていないことから、「業界内のシェアの取り合いではない広がりが期待できる。戦う領域と戦わない領域を決め、戦わない領域で協力しあえれば面白いマーケットになる」などと述べた。
三菱UFJ信託銀の田中氏は、同行が中心となって三菱UFJフィナンシャル・グループが開発しているプラットフォーム「Progmat」(プログマ)のコンセプトなどを紹介した。またセキュリティトークンのアイデアが誕生し、関係者が面白みを感じてこぞって取り組んだ時期を経て、実際の運用を想定して規制について考えるフェーズとなって生じた課題や難しさなどについて言及した。
BG2C FIN/SUM BBは8月25日も行われ、オンラインで配信される。「デジタル通貨によるオンチェーン決済の可能性」「デジタル決済、STOの未来」「STOが拓く不動産市場の未来」「デジタルアセットインフラとCBDC」といったセッションなどが予定されている。
文・編集:濱田 優
画像:BG2C FIN/SUM BB オンライン配信より