東ヨーロッパで暗号資産(仮想通貨)が不正に利用されているケースが目立っている。ブロックチェーン分析会社チェイナリシス(Chainalysis)は、同社がまとめたレポートで指摘している。
東欧における取引量410億ドル(約4兆3000億円)のうち、1.4%がさまざまな「不正な組織」に送られており、ラテンアメリカに次いで世界で2番目のシェアを占めている。
「東欧は他のどの地域よりもグローバルなダークネット市場の活動が盛んだ」とチェイナリシスはレポート「Eastern Europe: High Grassroots Adoption, Outsized Darknet Market and Ransomware Activity(東欧:高い一般普及、並外れたダークネット市場とランサムウェア活動)」で述べている。
ICOを発表したダークネット市場も
こうした活動のほとんどは、ハイドラ・マーケットプレイス(Hydra Marketplace)で行われている。チェイナリシスの推定では、ハイドラ・マーケットプレイスは同エリアにおいて暗号資産の取引量で6番目に多く、チェイナリシスのブログによると、「ダークネット市場や他の違法サービスがトップ10に入っている地域は他にない」という。
ハイドラは薬物販売マーケットプレイスとして人気を集め、偽IDなどの違法な商品やサービスも提供している。ハイドラは2019年12月にICOを発表したことで知られている。ICOは6月、新型コロナウイルス感染拡大のために無期限延期となった。
チェイナリシスによると、東欧はランサムウェアでも世界をリードしているという。ランサムウェアが得た資金の23%以上が東欧に関連していた。
想定される理由として、東欧諸国における経済的機会の乏しさと、ハッキングに対する政府の支援、若者のハイテクへの高いリテラシーなどをあげている。
高い普及率
東欧には暗号資産の普及で世界をリードする2つの国がある。ウクライナとロシアだ。両国は、世界最大の暗号資産取引高を誇るわけではないが、人々は積極的に暗号資産を使用し、ピア・ツー・ピアで取引を行っているとチェイナリシスは述べた。
例えば、ピア・ツー・ピア取引所「Paxful」のユーザー数を見ると、新型コロナウイルス感染拡大の間にロシアのユーザーが350%増加している。
過去1年間で、ロシアは168億ドル以上の暗号資産を送金し、166億ドルを受け取っており、一方、ウクライナは82億ドルを送金、80億ドルを受け取ったとチェイナリシスは推定している。
この数字は中国やアメリカなどよりもはるかに低いが、両国の経済やインターネットユーザー数を考えると、暗号資産取引量は大きい。チェイナリシスによると、過去1年間の東欧での取引量の約85%は、1万ドルを超える大口取引だった。
翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:Shutterstock
原文:Eastern Europe Actively Using Crypto for Illicit Purposes: Chainalysis