「DeFi(分散型金融)」と呼ばれるブロックチェーンベースの貸付・取引システムが今年、暗号資産(仮想通貨)業界のニュースを独占している。DeFiプラットフォームに担保としてロック(預け入れ)された資産は2020年、10倍以上に増え、90億ドル(約9500億円)を超えた。
ユニスワップ(Uniswap)、カーブ(Curve)、バランサー(Balancer)などのDeFiプラットフォームは、低コストと使いやすさで暗号資産トレーダーを惹きつけてきた。
そして今、バイナンス(Binance)、コインベース(Coinbase)、フォビ(Huobi)、オーケーエックス(OKEx)などの大手取引所から多くの取引高を奪い始めている。
これらの「中央集権型」と呼ばれる取引所は、自ら「分散型」と呼ぶ新たなビジネスを始めている。人気トレンドから利益をあげ、顧客のこれ以上の流出を食い止めることが目的だ。
DeFiに進出する大手取引所
フォビは9月15日、同社のDeFi構想に新たに10人のメンバーを追加したと発表。その構想を「中央集権型と分散型の金融サービスプロバイダーのコンソーシアム」と形容した。
前日にはフォビの最大のライバルであるオーケーエックスが、オーケーエックスチェーン(OkexChain)は取引所が運営する最も分散化されたパブリック・ブロックチェーンであると主張した。
そして先週、世界最大の暗号資産取引所バイナンスは、同社の中央集権型取引プラットフォームと、分散型パブリックチェーンのバイナンス・スマート・チェーン(BSC:Binance Smart Chain)の統合を発表した。
バイナンスの「CZ」ことジャオ・チャンポン(Zhao Changpeng)CEOは、先日同社が開催した「World of DeFi」サミットでDeFiの脅威を認めたようにさえ見えた。ジャオCEOは「先に誰かに破壊されるよりも、自らを破壊した方が良いに決まっている」とコメント。ジャオCEOによると、分散型取引所の運営コストの方がより低いという。
一方、オーケーエックスのジェイ・ハオ(Jay Hao)CEOは、「DeFiの有望さを無視することは不可能だ。そして我々はDeFiは成功すると確信している」とCoinDeskの取材に対してコメントした。
中央集権型取引所のビットコイン残高は減少
大手取引所が保有しているビットコインの残高は、ここ数週間で減少している。香港に拠点を置く暗号資産取引会社、バベル・ファイナンス(Babel Finance)のサイモン・チェン(Simon Chen)氏は、暗号資産の一部がDeFiに移動していることがその一つの理由のようだと述べた。
暗号資産分析会社のメッサーリ(Messari)が9月14日に発表したレポートによると、分散型取引所(DEX)は8月の暗号資産取引高の5%を占めた。DEXの取引高は「自動化マーケットメーカー(AMM)」のユニスワップ、カーブ、バランサーが大半を占めている。
「取引所ビジネスは非常に利益のあがるビジネスであることが証明されており、自動マーケットメーカー(AMM)はその一部を受け取り始めている」とメッサーリのアナリスト、ジャック・パーディー(Jack Purdy)氏はレポートに書いている。
バイナンスのジャオCEOは「分散型取引所(DEX)が中央集権型取引所に取って代わることが望ましい」と話す。その理由の一つは少なくとも、同社のバイナンスコイン(BNB)が「はるかに価値のあるものになるからだ」と述べた。
暗号資産に特化した投資ファンド、スリー・アローズ・キャピタル(Three Arrows Capital)のスー・チュー(Su Zhu)CEOは、中央集権型取引所は依然として「DeFiへの入り口だが、ユーザーが最終的に時間を費やす場所ではない」と言う。
「中央集権型取引所は最終的に、さまざまなDeFiプラットフォームを自社ブランドとして提供するようになるだろう」とチューCEOは述べた。
翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:バイナンスのジャオ・チャンポンCEO(CoinDesk archives(CoinDeskが加工))
原文:Binance’s CZ Doesn’t Even Dispute That DeFi Might Be Inevitable