ハイライト:
- 国家発展改革委員会が作成した草稿では、ビットコインの採掘(マイニング)は淘汰されるべき産業に分類された。同草稿がこのまま最終案となっても、単に採掘が禁止されるというわけではない。
- 地方政府は通例同委員会のガイダンスに従うが、実際に措置を講じるには産業政策ではなく、各省の法律に沿って行われる。
- 過去にも、ある産業が淘汰されることで地方の利益が損なわれるという理由で、一度は「望ましくない」というレッテルを貼られた産業が見直されたケースはいくつかある。
- 今回の同委員会の草稿に関して、採掘業者は余剰電力の利用を理由に採掘業を淘汰することは、地方経済の利益を損なうとする主張を述べている。
2017年9月4日、中央銀行の中国人民銀行は、他の政府機関や金融当局と共同で、イニシャル・コイン・オファリング(ICO)を禁止した。その後直ちに、規制当局はビットコインや仮想通貨取引所の閉鎖を命じた。
2019年4月8日、国家発展改革委員会(NDRC)は、産業構造指導目録の改正を提案した。改正案はパブリックコメントを募集する段階だが、「ビットコインの生産過程にある仮想通貨の採掘」は、他の数百に及ぶセクターに加えて淘汰されるべき産業に分類された。
国内外のメディアはこれを大きく報じ、2017年にICOと国内スポット取引が禁じられたように、中国は仮想通貨の採掘を禁止する方針だと結論づけている。
しかし、現時点ではミスリードな解釈だろう。NDRCの政策提案を理解するには、その背景を冷静に読み解く必要がある。
地方政府と地方経済の利益
NDRCが初めて産業構造指導目録を発表したのは2005年。その中で、NDRCは産業を3つのカテゴリーに区分した:後押しするセクター、制限するセクター、淘汰すべきセクター。
区分の目的は、国家のマクロ経済政策として、地方政府がそれぞれの経済発展を促すための投資やリソースを分配できるよう指導するためである。その政策に法的ステータスを与えるため、国務院は2005年に産業構造調整を促すための暫定規定を公布している。
この暫定規定の19条は、地方政府が淘汰すべきセクターに区分された産業に対して何をすべきかを以下のように説明している。
「淘汰すべきセクターにおけるプロジェクトに対する(政府による)投資は禁じるものとする。全ての金融機関は、これらのプロジェクトを支持する資金提供を停止し、既に投下された資金(貸出)を回収するための施策を講じる」
「同セクターにおける企業が、生産技術またはその機材、製品の撤廃を拒絶した場合、地方政府の当該当局はそれに関連する地方の法律および規制に準じて、生産の停止または生産施設の閉鎖を命じることができる」
ゆえに、地方政府が、NDRCの政策指針に沿ったしかるべき対策を講じる必要があるのは確かだが、それを行うに重要な鍵を握るのが「それに関連する地方の法律および規制」の存在だ。
企業統治やコンプライアンスを専門とする弁護士のKai Xu氏は、地方政府は業務の停止や設備の閉鎖を命じる際には、それぞれの地方法と規制を運用しなければならないと強調する。
例えば、中国国家工商行政管理総局は、インターネット広告やeコマース業を対象とする行政処分規定を発表している。この規定には、行政命令を行う当該当局が明らかにされ、どのような処分がどう下されるかのが明示されている。
前出の弁護士Xu氏は、「行政処分を行うには、まずは法的根拠が必要だ。しかし、現時点において、ビットコインの採掘がいずれの法律に則るべきかは不明だ」と話す。
「NDRCの政策提案の法的ステータスは、中央銀行が2017年に行ったICOの禁止命令と違う」と同氏。「前者が産業政策であるのに対して、後者は省による規制文書である」
今回のNDRCの草案が最終案になるとしても、具体的な施策を講じるのは地方政府であり、それに関連する省であると、Xu弁護士は続けた。また、一政策が最終的に施行されないケースは常に考えられる。
加えて、NDRCが過去10年にわたって政策指針を幾度も更改してきたことは、注目すべき点でもある。
翻訳・抜粋:CoinDesk Japan編集部
編集:佐藤茂、浦上早苗
写真:Chinese mining farm image via CoinDesk archive
原文:China’s New Policy Isn’t An Automatic Bitcoin Mining Ban – Here’s Why