大手暗号資産(仮想通貨)取引所のビットコイン(BTC)残高が2018年11月以来の低水準となっている。価格の上昇を予想する投資家が、長期保有を続けようとする心理が背景にありそうだ。
データサイトのグラスノード(Glassnode)のデータによると、取引所のビットコイン残高が現在の低水準にまで減少したのは、2018年11月以来のこと。
当時、ビットコインキャッシュ(Bitcoin Cash)がハードフォーク(ビットコインから分岐)したため、ビットコイン保有者の中には新しいトークンを受け取るためにビットコインを自身のウォレットに移す動きが見られた。取引所の残高減少の一因になった可能性がある。
その後、ビットコインは2019年はじめまで弱気傾向が続いたが、4月には回復。
長期保有戦略
大手取引所におけるビットコイン残高の低水準は、必ずしも市場の弱気傾向を意味するものではない。
グラスノードが今年4月14日にツイートしたように、これはビットコイン保有者の強気の見方を反映している可能性がある。ビットコインをコールドウォレットに移すなど、保有者の一部は長期保有戦略にシフトしている。
Digital Assets Dataのマイク・アルフレッド(Mike Alfred)CEOも、上記の可能性を述べている。
「マイクロストラテジー(MicroStrategy)のような大企業がビットコインを購入しているなか、売却する理由はどこにもない。大企業や機関投資家が市場に参入し始めているなか、売りに出す理由はあるだろうか?」
韓国のデータプロバイダーのクリプトクワント(CryptoQuant)も、取引所のビットコイン残高の減少を注視している。キ・ヨンジュ(Ki Young Ju)CEOは、これは取引所でビットコインを売却できる保有者数が減っていることを意味し、市場の大幅な修正の可能性は回避されることになると述べた。
一方、データサイトのChainanalysisによると、今回の減少は直線的なものではないという。同社のデータによると、取引所へのビットコインの1日あたりの純流入額は9月21日、3月12日の暴落以降、最大の増加を記録した。
同社エコノミストのフィリップ・グラッドウェル(Philip Gradwell)氏は、この数字は「市場の弱体化」を示していると話す。
「取引所のビットコイン残高は低水準ではあるが、ここ数日は増加に転じている。長期的な減少傾向と比べるとまだ小さい」
トークン化ビットコイン
ノルウェーの調査会社Arcake Researchが9月22日に発表したレポートによると、取引所のビットコイン残高の減少は3月中旬に始まった。
Arcane Researchは、減少の原因の一つはDeFi(分散型金融)にあると考えている。DeFiでは、利回りを稼ぐために、ビットコインがイーサリアムブロックチェーンでトークン化されている。
「3月15日以降、10万ビットコインがイーサリアムに流入しており、残高減少の一因となっている可能性がある」と同レポートに記している。
イーサリアムでトークン化されたビットコインは、DeFiにおける最大の資産の一つになっている。データサイトのデューン・アナリティクス(Dune Analytics)によると、現在、10万8000ビットコイン(約11億ドル、約1160億円)がトークン化されている。
翻訳:新井朝子
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:Glassnode
原文:Bitcoin Balances on Exchanges at 2-Year Low and That May Be a Bullish Sign