ビットコイン先物、建玉が5月以来の低水準──資金がDeFiに流入か:シカゴ取引所

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME:Chicago Mercantile Exchange)のビットコイン先物の建玉(未決済の契約総数)は10月2日、3億4500万ドル(約364億円)まで減り、5月4日以来の低水準となった。データサイトのスキュー(Skew)の統計で明らかになった。

8月17日に記録した過去最高の9億4800万ドル(約1001億円)から64%近く下落している。

CMEは、建玉の減少は機関投資家の動向を表しているとしている。

すべての暗号資産(仮想通貨)取引所でみると、2日、建玉の総計は36億ドル(約3800億円)。8月17日には57億ドル(約6018億円)を記録していた。

ビットコイン先物、急成長するDeFiに押され下落:シカゴ取引所
CMEのビットコイン先物の建玉
出典:Skew

DeFiやイールドファーミングに流入

先物の建玉が減少した一方で、データサイトのDeFiパルス(DeFi Pulse)によると、DeFi(分散型金融)プラットフォームの預かり資産(TVL:Total Value Locked)は過去2カ月で約3倍となり、109億ドル(約1兆1508億円)に達した。

「資金はDeFiやイールドファーミングに流入している。現物と先物のキャッシュ・アンド・キャリー取引に対して、機関投資家はそこまで魅力を感じていないだろう」とロンドンのプライム・ブローカー、ベクワント(Bequant)のデニス・ビノコウロフ(Denis Vinokourov)氏は述べた。

暗号資産は8月後半に先物市場からDeFiに流入し始め、先物とスポット(現物)価格のスプレッド(差)、いわゆる「プレミアム」は下落し始めた。

スキューによると、大手取引所のプレミアムは8月後半、12%から2.5%まで下落し、以来7%付近にとどまっている。

プレミアムがほぼ半分になったことで、投資家や機関投資家はこの4週間、先物に資金を投入できなくなった可能性が高い。

キャッシュ・アンド・キャリー取引とは

キャッシュ・アンド・キャリー取引では、例えば、先物のプレミアムが大きい場合(先物が現物より高い価格で取引されている場合)、スポット(現物)市場で暗号資産を購入し、先物市場で先物契約を売却する。

先物は最終的には満期日にスポット価格と同じになるため、プレミアムが大きければ大きいほど、満期日に決済したときの利ざやは大きくなる。

加えて、ビットコイン価格は9月に7.5%下落し、3月以来最大の下落幅となったため、CMEや他の取引所での建玉の減少につながったようだ。

「9月のビットコイン価格の下落は、すべての取引所とデリバティブ商品で建玉が減少するなど、市場の短期的な楽観論にきわめて大きな影響を与えた」とシンガポールに拠点を置くStack Fundsのマシュー・ディブ(Matthew Dibb)CEOは語った。

「売り圧力がさらに強まれば、建玉は4月に見られた30億ドルを下回る水準に達するだろう」とディッブ氏は付け加えた。

翻訳:新井朝子
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:Skew
原文:Open Interest in CME Bitcoin Futures Slides as Market Sapped by Surging DeFi