暗号資産(仮想通貨)市場のような成長の速い業界では、資金の動きや投資家の関心をけん引している主要なテーマを抜き出すことはきわめて難しい。
だが、新しい市場がどのように進化するのか、何が次の大きな一歩を生み出すことになるのかを理解する一助になる。
最新の「CoinDesk Research Quarterly Review」は、第3四半期に目覚ましい成長を見せ、デジタル資産市場を成熟させることに大きな役割を果たしている3つのトレンドに焦点を当てている。
24の図表で、ステーブルコイン、DeFi(分散型金融)、デリバティブを検討し、興味深い結果を引き出した。ここではその一部を見ていこう。
ステーブルコイン
法定通貨に裏付けられたステーブルコインの価格は、元となる通貨(通常は米ドル)から決して変わらないというのはよくある誤解だ。これは正しくない。固定された通貨単位に固定されているが、実際には市場価格はわずかに変動する。
そのため、例えば、投資家は1ドルのステーブルコインを発行し、市場で1.0003ドルで売るといった裁定取引のチャンスが生まれる。
数百万倍で考えると、かなりの利益を生み出すことができる。売り圧力はステーブルコインの価値を固定された価格から下方に動かす。
第3四半期、時価総額で第2位のステーブルコインであるUSDコイン(USDC)の供給量は、第1位のステーブルコインのテザー(USDT)よりも大幅に増加した。裁定取引のチャンスはテザー(USDT)の方が大きかったにもかかわらず。
これは、機関投資家やトレーダーのUSDコイン(USDC)に対する需要が増加していることを示している。USDCは認可を受けた、アメリカに拠点を置く企業によって運営されており、より規制当局に歩み寄ったアプローチをとっている。
DeFi(分散型金融)
イーサリアム(ETH)の時価総額は2020年第3四半期に60%増加し、250億ドルから9月末には405億ドル(約4兆2800億円)となった。預かり資産トップ10のDeFiコインの時価総額は、第3四半期に345%増と大幅に増加、12億ドルから53億ドル(約5600億円)となった。
時価総額を合計すると、DeFiは今、ブロックチェーンの時価総額の約12%を占め、イーサリアムエコシステムをけん引するストーリーとして台頭している。
イーサリアムは2014年に「世界のコンピューター」になることを目標に登場した。2017年のICO(新規コイン公開)ブームの中、イーサリアムは「未来の資金調達プラットフォーム」となった。今、DeFiの進化におけるイーサリアムの役割は、再び、ブロックチェーンのストーリーを変えている。
これは個人投資家および機関投資家からの関心だけにとどまらない。特に「イーサリアム2.0」に移行し、基盤となるテクノロジーが大きな変化を遂げようとするこの時期には、技術的検討事項にも影響を及ぼす可能性がある。
デリバティブ
イーサリアム先物市場はビットコイン先物市場と比べるとまだ小規模だが、積極的に後を追っている。イーサリアム先物は、1日あたりの取引高も建玉(未決済の契約総数)も記録を更新しており、1日あたりの取引高は8月2日に140億ドル(約1兆4800億円)、建玉は8月15日に17億ドル(約1800億円)に達した。9月にはどちらの数字も、より高い「新しい通常」水準に落ち着いた。
これは、イーサリアムのエコシステムにおける力強い成長を表し、機関投資家が投資資産としてイーサリアムをますます受け入れていることを示している。
さらに、暗号資産市場全体の進化も浮き彫りにしている。なぜなら、成熟市場の前提条件は、活発なデリバティブ市場の存在にあるからだ。これまでのところ、デリバティブ市場はビットコイン先物が独占している。多様性の拡大は、市場全体の健全化につながる。
翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:Shutterstock
原文:These 3 Trends Are Driving Crypto Market Growth Now