日本銀行は10月9日、各国の中銀が取り組みを加速させている「中央銀行デジタル通貨」(CBDC=Central Bank Digital Currency)のうち、個人や企業を含む幅広い主体の利用を想定した「一般利用型CBDC」について、2021年度にも概念実証(PoC=Proof of Concept)を行う方針を明らかにした。
PoCではCBDCの基本的な機能や具備すべき特性が技術的に実現可能かどうかを検証。その上で、必要と判断すればパイロット実験の要否についても検討するという。
「銀行やノンバンク決済事業者、ITや法律の専門家、関係当局などと協力する」
PoCのフェーズ1では、「システム的な実験環境を構築し、決済手段としてのCBDCの中核をなす、発行、流通、還収の基本機能」を検証。フェーズ2では、「フェーズ1で構築した実験環境にCBDCの周辺機能を付加して、その実現可能性など」を検証。そして、必要であれば民間事業者や消費者が実地に参加する形でのパイロット実験を行うことも視野に入れるという。
PoCとともに、次の4つについても検討するという。
(1)中央銀行と民間事業者の協調・役割分担のあり方
(2)CBDCの発行額・保有額制限や付利に関する考え方
(3)プライバシーの確保と利用者情報の取扱い
(4)デジタル通貨に関連する情報技術の標準化のあり方
日銀は「CBDCの導入を検討する場合には、システム面や制度面にとどまらず、広範かつ大規模な取り組みが必要となる」とした上で、「銀行やノンバンク決済事業者、ITや法律の専門家、関係当局などと協力し、様々な知見を今後の検討に活かすことを重視」すると述べている。
骨太の方針で言及、日銀内にデジタル通貨グループの設置……動きは加速していた
日本のCBDCに関する取り組みでは、7月17日に閣議決定された「骨太の方針2020」では原案になかったデジタル通貨への言及が盛り込まれたほか、日銀が7月20日、決済機構局決済システム課に「デジタル通貨グループ」を設置。
さらに雨宮正佳副総裁が7月29日の日本記者クラブでの講演で、「将来必要になった時に的確に対応できるように準備する観点から、一段ギアをあげて検討を進めていく必要がある」と言及するなど、動きが加速していた。
文・編集:濱田 優
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