イギリスの個人向け暗号資産デリバティブ販売禁止、市場への影響は限定的：業界関係者

イギリスの金融行動監視機構（FCA：Financial Conduct Authority）が、暗号資産（仮想通貨）デリバティブと上場投資証券（ETN）の個人投資家への販売を禁止する最終案をまとめたことに対して、暗号資産業界では市場全体への影響は限定的とする見方が聞かれた。

個人トレーダーに暗号資産デリバティブ商品を提供する一部のイギリスの仲介業者は、売上収益が低下する可能性がある。一方、クラーケン（Kraken）をはじめとする大手暗号資産取引所における影響は最小限になるだろうと、アナリストを含む業界関係者は述べる。

イギリスの個人投資家は暗号資産の取引ができ、一部のトレーダーは規則を回避するために海外の取引所を利用することもできるだろう。

FCAによる禁止措置は1月に施行される。FCAが発表したレポートによると、プロの投資家は「リスクを良く理解し、仮に損失が発生した場合でもその影響を吸収できる」との理由などから、暗号資産デリバティブの取引を禁止されない。

「暗号資産デリバティブの取引に熱心な人たちは、影響を受けない地域でアカウントを開設する方法を見つけるだけのこと」とブロクタゴン・フィンテック・グループ（Broctagon Fintech Group）のドン・グオ（Don Guo）CEOはCoinDeskに述べた。

「個人トレーダーが規制を受けていない取引所を使うことになるというきわめて大きなリスクがある。実際、個人トレーダーはより大きなリスクにさらされることになる」

デリバティブを取引する個人投資家はいない

暗号資産デリバティブ商品を直接取引しているイギリスの個人投資家はほとんどいないと、シカゴのCMEグループをはじめとする取引所に価格インデックスを提供しているCFベンチマークス（CF Benchmarks）のスイ・チュン（Sui Chung）CEOは話す。

チュンCEOによると、その代わりに個人投資家は通常、いわゆる差金決済取引（CFD）プロバイダーを使うという。

クラーケン傘下のクリプト・ファシリティーズ（Crypto Facilities）、CMCマーケッツ（CMC Markets）、IGインデックス（IG Index）などが、規制のもと、個人投資家に暗号資産デリバティブや上場投資証券（ETN）を提供してきた。

「今回の禁止がクリプト・ファシリティーズに与える影響は最小限のものにとどまる」とクリプト・ファシリティーズの広報担当者はCoinDesk宛てのメールに書いている。

またIGグループも「我々はFCAの発表から生じる影響はまったく見込んでいない。これらの商品は、我々の多様化した、グローバルビジネスのきわめて小さな一部分にすぎない。影響を受ける売上は、IGグループ全体の売上の1%にも満たないだろう」と声明で述べた。

調査会社ショア・キャピタル（Shore Capital）のビベック・ラジャ（Vivek Raja）氏とポール・マクギニス（Paul McGinnis）氏によると、5月時点でIGグループの今年の売上に占める暗号資産の割合は2.7%、そのうちイギリス市場はわずか1〜1.5%だった。同様にCMCマーケッツの売上に暗号資産が占める割合は18%未満だった。

CMEグループとCMCマーケッツは本件へのコメントを控えた。