中国は国民も参加する大規模な中央銀行デジタル通貨(CBDC)の実験を行っているが、アメリカの中央銀行は依然として慎重な姿勢を維持している。
10月19日、IMF(国際通貨基金)が開催したパネルディスカッションに参加した各国中央銀行のトップは、中央銀行デジタル通貨の調査研究は継続するものの、CBDCにおける政策上の懸念についての発言を繰り返した。
ディスカッションには、FRB(米連邦準備理事会)のジェローム・パウエル(Jerome Powell)議長、マレーシア中央銀行のノル・シャムシアー(Nor Shamsiah)総裁、BIS(国際決済銀行)のアグスティン・カルステンス(Agustin Carstens)総支配人、サウジアラビア通貨庁のアハメド・ホリフィ(Ahmed Abdulkarim Alkholifey)総裁が参加した。CBDCは一部の国では有用かもしれないが、導入は時期尚早という考えで一致したようだ。
1時間のディスカッションで特に目新しいことは何も語られず、パウエルFRB議長はアメリカはデジタルドルの評価作業を行っていると繰り返した。
「この問題はまさにアメリカにとって、一番に行うことよりも正しく行うことが重要と考えている。ドルが世界的に重要な役割を担っていることを考えると、研究と政策開発の最前線に留まることは不可欠。ドルは世界の基軸通貨であり、ドルに対する世界的な大きな需要は引き続き存在している」
FRBを構成する12の連邦準備銀行の一つ、ボストン連邦準備銀行はマサチューセッツ工科大学(MIT)のデジタル通貨イニシアチブと連携してCBDCの研究を行っているとパウエル議長は述べた。
「このタイプの実験はCBDCのリスクとメリットに対する我々の理解を高めるもので、異なる設計とシステム構成におけるメリット・デメリットを明らかにし、政策面でのセキュリティリスクを評価している。また政界、学界、民間の幅広いステークホルダーと積極的に関わりを持ち、CBDCの潜在的な問題、幅広い設計の選択肢、他の検討事項についてさまざまな視点と専門知識を収集している」
パウエルFRB議長氏は1年前にもまったく同じようなことを述べている。その際、議長はアメリカの議員に対して、FRBはデジタルドルの可能性を評価しているが、アメリカにとって具体的にどのようなメリットがあるかはわからないと述べた。
マレーシア中央銀行のシャムシアー総裁は、中央銀行デジタル通貨の開発では民間部門が「重要な役割を持つ」と考えていると述べ、サウジアラビア通貨庁のホリフィ総裁は、サウジアラビアは経済政策ツールとして中央銀行デジタル通貨を検討する可能性があると述べた。
IMFは今回のイベントに先立って、中央銀行デジタル通貨と政策上の検討事項に関するレポートを発表。デジタル通貨は中央銀行にとって有用なツールとなり得るが自国の通貨政策目標に及ぼす潜在的な影響を評価する必要があると述べている。
翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:ジェローム・パウエルFRB議長(Wikimedia Commons)
原文:Major Meeting of Central Banks Produces Same Old ‘Evaluating’ CBDCs Refrain