米銀最大手のJPモルガン・チェースは、独自に開発してきたブロックチェーンを基盤とする国際送金の情報プラットフォームを「Liink(リンク)」という新たなブランドの下で拡大させていく。同行が28日に発表した。
このプラットフォームは以前まで「インターバンク・インフォメーション・ネットワーク(IIN)」と呼ばれていたもの。マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金供与の対策強化が世界各国の銀行に求められる中、JPモルガンが2017年にイーサリアムブロックチェーンを活用して開発した。
クロスボーダー決済を行う際、受取人情報の確認などをスピーディに処理することができ、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の国内メガバンク3行を含む各国の金融機関がこのプラットフォームへの参加を表明している。
JPモルガンは28日、IINをLiinkブランドで展開すると発表。Liinkのグローバルヘッドにはクリスティーン・モイ(Christine Moy)氏が就任し、Liinkプラットフォームにおける新たな次世代サービスの開発を加速させる。
ブロックチェーンを巡るJPMの動き
JPモルガンは28日、Liinkを含むブロックチェーン関連の事業を統括する新事業ユニット「Onyx」の設立も発表した。Onyxの最高経営責任者(CEO)には、JPモルガンのブロックチェーンプロジェクトを統括してきたウマル・ファルーク(Umar Farooq)氏が就く。
「お金、情報、資産が世界を循環する新たな仕組みがデザインされようとしている。新ブランド『Liink』は極めて重要なこの瞬間に誕生することになった」とファルーク氏は発表文で述べている。
また、グローバルに事業を展開する大手テクノロジー企業が、JPモルガンが開発したデジタル通貨「JPM Coin(JPMコイン)」を利用したクロスボーダー決済を導入すると、CNBCが27日に報じた。
デジタル通貨「JPMコイン」で決済
JPモルガンのホールセールペイメント事業を統括するTakis Georgakopoulos氏がCNBCの取材に答えたもので、JPMコインを利用する企業の名は明らかにされていないが、早ければ今週にも始めるという。
JPモルガンは2019年2月、デジタル通貨「JPM Coin」構想を発表。法定通貨と同等の価値を持つデジタル通貨をブロックチェーンの上で活用して、企業同士が迅速に決済できる仕組みの開発を進めていた。
米銀最大手はこれまでイーサリアムブロックチェーンを活用する手法の研究を進め、金融機関が利用する次世代の仕組み作りを続けてきた。アメリカの大手金融機関の中では、最も積極的にブロックチェーンの研究開発を行う銀行だ。
今年8月には、独自に開発したイーサリアムを基盤とするブロックチェーンプラットフォーム「Quorum」を米コンセンシス(ConsenSys)に売却。その譲渡契約と引き換えに、JPモルガンはコンセンシスに投資を行い、2社の提携関係を強化する戦略に転じた。
文:佐藤茂
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