某大手テクノロジー企業が、米銀最大手のJPモルガン・チェースが開発したデジタル通貨「JPMコイン(JPM Coin)」を利用したクロスボーダー決済を始めると、CNBCが27日(米東部時間)に報じた。
JPモルガンのホールセールペイメント部を統括するTakis Georgakopoulos氏はCNBCの取材に対して、グローバルに事業を展開するテック企業が早ければ今週にも、JPMコインを利用した決済を開始すると答えた。企業名は明かさなかった。
同報道によると、JPモルガンは、ブロックチェーン上で展開する次世代決済システムなどを含む新事業の開発を進めるため、「Onyx」と称する新たな事業ユニットを設立。同ユニットには約100名の人材を投入するという。
「JPM Coin is LIVE」
JPモルガンのブロックチェーンプロジェクトに参画しているクリスティーン・モイ(Christine Moy)氏は同日、「JPMモルガンはブロックチェーンにフォーカスした新たな部署をつくる。JPMコインが動き出した(JPM Coin is LIVE)……」と同氏のツイッターでコメント。CNBCの報道を部分的に認めた。
JPモルガンはこれまで、イーサリアムブロックチェーンを活用する手法の研究を進め、金融機関が利用する次世代の仕組み作りを続けてきた。アメリカの大手金融機関の中では、最も積極的にブロックチェーンの研究開発を行う銀行だ。
イーサリアムを基盤とするブロックチェーンプラットフォーム「Quorum」を独自に開発し、JPモルガンは今年8月にブロックチェーンのソフトウエアを開発する米コンセンシス(ConsenSys)に売却した。その譲渡契約と引き換えに、JPモルガンはコンセンシスに投資を行い、2社の提携関係を強化する戦略に転じた。
クロスボーダー決済の情報基盤
また、マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金供与の対策強化が世界各国の銀行に求められる中、JPモルガンは2017年にイーサリアムブロックチェーンを活用して、クロスボーダー決済に必要な情報をスピーディにやり取りできるプラットフォームを開発した。
このプラットフォームは「インターバンク・インフォメーション・ネットワーク(IIN)」と呼ばれるもので、クロスボーダー決済の際に、受取人情報の確認などを行うことができる。三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の国内メガバンク3行を含む各国の金融機関が同プラットフォームに参加している。
JPモルガンは2019年2月にデジタル通貨「JPM Coin」構想を発表。法定通貨と同等の価値を持つデジタル通貨をブロックチェーンの上で動かし、企業同士が迅速に決済できる仕組みの開発を進めてきた。
文:佐藤茂、ダニエル・パーマー
写真:Shutterstock
原文:JPMorgan’s ‘JPM Coin’ Is Live, Execs Say