10月26日──国際決済銀行、中銀デジタル通貨の実験計画を発表 中国のニュースサイトが報じる
中国のニュースサイトの澎湃(ほうはい:The Paper)は10月26日、中央銀行のための中央銀行と称されるBISが現在、スイスの中央銀行と協力して中央銀行デジタル通貨の実験を計画していると報じた。
BISイノベーションハブ(BIS Innovation Hub)の責任者ブノワ・クーレ(Benoit Coeure)氏が10月23日~25日に上海で開催されたBund Summitで明らかにしたところによると、概念実証(PoC:proof-of-concept)は年内に完了し、その後、現金利用に相当するリテールCBDCのユースケース実験が行われるようだ。
これらの実験には、デジタル通貨と既存の決済システムを相互運用する方法や、デジタルIDの役割、コンプライアンスの確認などが含まれると伝えられた。
クーレ氏は、こうしたユースケースでは、中央銀行デジタル通貨の基盤となるブロックチェーンのさらなる取り組みが必要になるだろうと述べた。
10月26日──トヨタグループとディーカレットがデジタル通貨を発行、福利厚生に活用する実証実験
トヨタグループのIT戦略企業・トヨタシステムズとディーカレットは10月26日、デジタル通貨に関する実証実験を共同で開始したと発表した。ディーカレットが構築したブロックチェーン上でデジタル通貨を発行・管理するプラットフォームを活用、独自デジタル通貨を発行して、トヨタシステムズの福利厚生にかかわる決済処理や自動化について技術的な検証を行う。トヨタシステムズ全社員の約 2,500 名以上が参加する大規模な実証実験という。
発表によると、発行したデジタル通貨の有効期間は6ヵ月。トヨタシステムズ社員が福利厚生として付与されたデジタル通貨を、実証実験専用に用意されたカタログギフトや福利厚生ポイントへの交換に利用する。
交換されると、実行され た記録がスマートコントラクトへ書き込まれ、取引額に応じたデジタル通貨が全社員に用意された専用のウォレットから、商品・ポイントのウォレットへ即座に送付される。この仕組みについて検証し、有効性を確認するという。
10月27日──ソラミツ、デジタル通貨の発行・運用を可能にするエンタープライズサービスUNKAI/雲海を発表
カンボジア国立銀行と共同で世界初の中銀デジタル通貨Bakong(バコン)を開発したソラミツは10月27日、システムインテグレーターやサービスプロバイダー向けにデジタル通貨発行プラットフォームとなるエンタープライズサービス「UNKAI/雲海」をリリースしたと発表した。
雲海は、Linux Foundationが主催するオープンソースブロックチェーンプロジェクトHyperledger Projectにソラミツがオリジナル開発者として提供したブロックチェーンプラットフォーム Hyperledger Iroha(ハイパーレジャーいろは)を基にして作られたUNKAI BASEパッケージに追加機能を付加する、エンタープライズレベルのサービス・パッケージ。
バコンの技術も決済モジュールとして組み込まれており、ユーザーは複数のモジュールを組み合わせることで、世界で最初に中央銀行デジタル通貨発行システムとして利用されたセキュアかつ高品質な仕組みを短期間で構築できるという。
10月27日──マネックス、クリプト事業利益が7倍:第2四半期決算
マネックスグループは10月27日、7月~9月期の決算報告を開示し、暗号資産(仮想通貨)事業の営業利益が7倍になったと発表した。マネックスが2018年に暗号資産取引所のコインチェックを買収して以来、同事業における最高益を記録した。
決算資料によると、コインチェックの事業で構成されるクリプトアセット事業の営業利益は7億1400万円(同7月~9月期)。前年同期には約400万円の営業損失を計上したが、大幅に改善した。ビットコイン(BTC)価格の上昇と、ビットコイン以外の暗号資産であるアルトコインの取引量の増加がけん引した。
同クリプトアセット事業の営業損失は昨年10月~12月期(第3四半期)に、1億200万円に膨らんだが、今年1月~3月期には黒字に転換。新型コロナウイルスの世界的感染が影響し、ビットコインを中心とする暗号資産の価格は3月以降、大幅に上昇。国内市場でも暗号資産を新たに購入しようとする個人ユーザーが増加した。
マネックスの連結営業収益(4月~9月)は前年同期比12.6%増の293億円。税引き前利益は89%増え、41億5200万円だった。
10月27日──NTTデータ、三菱UFJ銀など7社が貿易取引をブロックチェーンでデジタル化する新会社に出資
NTTデータ、三菱商事、三菱UFJ銀行など7社は10月27日、貿易情報連携プラットフォーム「TradeWaltz」を運営する株式会社トレードワルツへの共同出資に合意したことを明らかにした。他に参加したのは、豊田通商、東京海上日動火災保険、兼松、損害保険ジャパン。
TradeWaltzでは、貿易書類を単にスキャンやOCRとして保存・授受するのではなく、構造化データとして企業間で共有し、分散台帳に蓄積する。これによってスマートデータとして活用できるようになり、AML対応や特恵関税適用申告に必要な原産地証明書類の処理などが効率化される。
NTTデータによれば、TradeWaltzが実用化すれば、貿易に関わるすべての業務を一元的に電子データで管理することができるようになり、貿易業務の作業量を“最大50%程度”削減できる見込みだという。
10月28日──JPモルガン、新ブランド「Liink」を発表
米銀最大手のJPモルガン・チェースは10月28日、独自に開発してきたブロックチェーンを基盤とする国際送金の情報プラットフォームを「Liink(リンク)」という新たなブランドの下で拡大させる方針を明らかにした。
このプラットフォームは以前まで「インターバンク・インフォメーション・ネットワーク(IIN)」と呼ばれていたもの。マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金供与の対策強化が世界各国の銀行に求められる中、JPモルガンが2017年にイーサリアムブロックチェーンを活用して開発した。
JPMコイン、ブロックチェーン事業を拡大
JPモルガンについてはまた、CNBCが10月27日、デジタル通貨「JPM Coin(JPMコイン)」を利用したクロスボーダー決済をグローバルに事業を展開する大手テクノロジー企業が導入すると報じている。JPモルガンのホールセールペイメント事業を統括するTakis Georgakopoulos氏がCNBCの取材に答えたもので、JPMコインを利用する企業の名は明らかにされていない。
JPモルガンは2019年2月、デジタル通貨「JPM Coin」構想を発表。法定通貨と同等の価値を持つデジタル通貨をブロックチェーンの上で活用して、企業同士が迅速に決済できる仕組みの開発を進めていた。
10月28日──リップル、SBI子会社マネータップに出資へ
米リップルがSBIホールディングスの子会社マネータップに出資する。SBIホールディングスが10月28日発表した。出資額は公表されていない。マネータップは、リップルのグローバル金融決済ネットワークRippleNet(リップルネット)の技術を使っており、今回の出資を機にリップルとの連携を深め、「少額集金サービスや法人支払い機能、地域通貨Pay、海外送金サービス、インバウンド・アウトバウンド決済サービス、サプライチェーンファイナンス機能などの新機能・新サービス開発を加速」させるとしている。
10月28日──日本セキュリティトークン協会が「不特法STO分科会」など2分科会を新設
日本セキュリティトークン協会は10月28日、新たに不動産特定共同事業と農業支援ファンドへの活用を探究する2分科会を新設した。一つは「不特法STO分科会」(幹事:LIFULL)で、目的は不特法(不動産特定共同事業法)に準拠した不動産セキュリティトークンの発行スキームへの理解を深め、不動産領域におけるSTOを用いたセカンダリー市場の構築を目指す。もう一つは「農業支援ファンド分科会」(幹事:伊藤忠テクノソリューションズ)で、農作物生産者を応援し、返礼品の受領権利、優先購入権利などをST化、セカンダリー市場を創生することで活性化できないかを議論する。
同協会は5月にも、不動産証券化ソリューション分科会(幹事:フィンテックグローバル)、セカンダリーマーケット分科会(幹事:東海東京フィナンシャル・ホールディングス)、STナレッジポータル分科会(幹事:デロイト トーマツ コンサルティング)を設置していた。
10月28日──ビットフライヤー・ブロックチェーン、住友商事と不動産賃貸契約プラットフォームのプレ商用サービス開始
住友商事とbitFlyer Blockchainは10月28日、スマートコントラクト機能を備えたブロックチェーン「miyabi」を活用した不動産賃貸契約プラットフォーム「スマート契約」のプレ商用サービスを開始したことを明らかにした。10月1日に開始している。本格商用サービス開始は 2021 年の予定。
スマート契約は、借主向けにはアプリケーションを提供。物件の申込から不動産賃貸契約をアプリケーション上で行うことで、煩雑な書類手続きや捺印は不要となる。電力やガス、通信などの生活インフラに関する契約、引っ越し会社の手配といった転居手続き全般までをワンストップで行うことができる。
不動産管理・仲介会社向けにも管理機能が提供される。契約の申込状況などのステータスをリアルタイムで把握できるほか、手続きを電子化することで、ペーパーレス化を促進し、紙での管理コストを大幅に削減できる。
このほかにも、データ連携機能が提供される。電力やガスなどの各種契約の申込の際に、不動産賃貸契約時に借主本人が承諾した本人確認済の個人情報が連携できる。各種契約手続きが効率化されるためサービスの継続的利用が期待できるという。
個人情報管理では、bitFlyer Blockchain が提供する個人主権型ブロックチェーン ID ソリューション「bPassport」(ビーパスポート)を利用。不動産仲介会社が本人確認済であるという保証を与え、参加企業のサービス登録時の本人確認手続きや審査が不要になる。個人情報は借主自身で管理・提供でき、自らが選んだ企業にのみ提供できる。
住友商事・bitFlyer Blockchaiの両社は2019 年 7 月に不動産賃貸プラットフォームの開発に関する業務提携を発表し、実証実験などを行ってきた。プレ商用サービスには次 25 社が参加している。
運営会社(2社)……住友商事、bitFlyer Blockchain
不動産管理・仲介会社(9社)……ietty、きらめき不動産、シエルトパートナー、住商建物、住商リアルティ・マネジメント、宅都プロパティ、トーセイ・アセット・アドバイザーズほか
家賃債務保証会社(2社) ……エポスカード、オリコフォレントインシュア
損害保険関連(2社)…… 三井住友海上火災保険、(保険代理店 住商インシュアランス株式会社)
生活インフラ関連会社(7社)……東京電力エナジーパートナー、東京ガス、日本瓦斯、ジュピターテレコム、ソニーネットワークコミュニケーションズほか
引っ越し会社(2社) アートコーポレーション、アップル
システム開発協力会社(1社) ……SCSK
10月28日──カンボジア国立銀行がソラミツと共同開発の中央銀行デジタル通貨「バコン」正式運用開始
2019年7月からカンボジア全土でパイロット運用が開始され、中央銀行賞を受賞したブロックチェーンベースの中央銀行デジタル通貨「バコン」システムについて、開発したソラミツが10月28日、カンボジアのリテール決済および銀行間決済の基幹システムとして正式運用を開始したことを明らかにした。
バコンは、デジタル化されたカンボジアリエル(KHR)、米ドル(USD)を使用し、即時および最終的な取引を可能にする中央銀行デジタル通貨システム。カンボジア国立銀行とソラミツが共同開発した。2020年第3四半期の時点で、カンボジア全土の18の金融機関が採用。スマートフォンアプリを使うと、カンボジア国内の電話番号を持っている人なら誰でも、デジタルリエルまたは米ドルのウォレットを保有し、電話番号を指定またはEMVCo互換のQRコードをスキャンし、個人間や法人間での送金や店頭などでの支払いが行える。
文・編集:濱田 優
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