ビットコイン、米大統領選結果待たずに150万円を超える──“バイデン相場”の期待高まる

アメリカ大統領選挙の結果を待ち望んだ5日(日本時間)、日経平均株価が2018年10月以来の高値を付けると、ビットコイン(BTC)は150万円を超えた。時価総額で最大の暗号資産であるビットコインはこれからどのような値動きをしていくのか。

勝敗を左右する激戦州では開票結果はまだ判明しておらず、現職のトランプ大統領が民主党を選挙を「盗もうとしている」と非難するなか、ビットコイン価格は今のところ、経済の迅速な回復を阻みかねない不透明感が長引く可能性がある。

「激戦州で数百万票の集計が依然として続いており、選挙はウォール街が期待していたよりも混迷し、長引いていることは明らか」とブルームバーグ・ニュースは伝えた。

ビットコインへの影響

アメリカ大統領選挙は投票日から一夜明けた後もまだ流動的、この状況は数日間続く可能性もあるという。

ある意味では、選挙運動がどれほど論争を引き起こしていたかを考えると、長引く不透明感はまったく予想通りかもしれない。かつてないほど分断しているように見えるアメリカの有権者は今、明らかに真っ二つに割れている。

だが別の意味では、この状況は市場にとっては短期的には驚きとなった。ここ数週間、投資家は実現しなかった民主党の圧勝「ブルーウェーブ(青い波)」を期待していたからだ。

わかっていることは、明確な結果が判明していない事態は多くの投資家が世界中の市場にとって最悪のシナリオと恐れていたものであることだ。

ビットコインにとって何を意味するのか。重要なポイントをいくつか見ていこう。

1)予想市場はバイデン氏勝利

予想市場に参加している暗号資産(仮想通貨)トレーダーは、民主党のバイデン前副大統領が勝利に向かっていると見ているようだ。

2)大規模な経済刺激策は期待薄

投資家が期待した「リフレーション・トレード(reflation trade)」──大規模な経済刺激策による迅速な経済回復──は今、可能性が低くなっている。民主党は下院で多数を占めているが、上院の過半数獲得は難しくなってきたため、どちらが大統領になっても数兆ドル規模の経済刺激策をめぐって意見が対立する可能性がある。

これはビットコインにとっては良くない事態かもしれない。多くの投資家はビットコインをインフレに対するリスクヘッジと考えているからだ。調査会社パンテオン(Pantheon)のチーフエコノミスト、イアン・シェファードソン(Ian Shepherdson)氏は11月4日午前、クライアント向けメールで次のように述べた。

「共和党が引き続き上院で多数派を占めるため、来年初め、我々は5000億ドル(約52兆円)超の経済刺激策に驚かされることになるだろう。民主党が上院を奪い返した場合に期待されていた2兆ドル(約209兆円)と比べるとはるかに少ないものになるからだ」

3)最悪のシナリオ

ある意味では、選挙の状況は多くの投資家が最悪のシナリオと考えていたものと一致しているようだ。つまり、結果が不透明な状況が長引く可能性がある。

トランプ大統領は集計の停止を求めたが、これは最終的な集計結果によって敗者となることを自身がうすうす認めていると考えることができる。トランプ大統領は最高裁まで争うと発言している。

大統領の攻撃的な性格を考えると事態は泥沼化する可能性がある。つまり、市場はしばらくの間、リスクオフモードとなるかもしれない。3月、新型コロナウイルスの感染拡大によって投資家が市場から資産を引き上げたことで、ビットコインは伝統的市場とともに急落した。

4)暗号資産トレーダーの動向

3日の選挙当日夜の取引をもとに考えると、暗号資産トレーダーはバイデン前副大統領の勝利をビットコインには好ましいと考えているようだ。

トランプ大統領の保護主義的な貿易政策と中国への敵対的姿勢は、他の条件は同じと仮定すると、短期的に米ドルの強化につながると考えているためかもしれない。

「トランプ大統領の勝利の確率と、ビットコイン価格の間には反比例の関係があるようだ」と暗号資産分析会社、イントゥーザブロック(IntoTheBlock)は述べている。

5)11月5日のFRB定例会議

市場に注目している人たちは今、11月5日に予定されているFRB(連邦準備制度理事会)の定例会議に目を向け始めているかもしれない。

特に大きな動きは予想されていないが、ジェローム・パウエル(Jerome Powell)委員長は、選挙の不透明感によって投資家が警戒するようであれば、市場に介入する準備はできているとこの機会を使って強調するかもしれない。

これはさらなる経済刺激策を意味する可能性がある。FRBはすでに今年、7兆ドル(約730兆円)までバランスシートを拡大している。経済刺激策が最終的にはインフレにつながるという投資家の予想は、ビットコイン価格が今年、ほぼ2倍にまで上昇することを後押しした。

6)暗号資産推進派の当選

複数の暗号資産推進派、あるいは少なくとも暗号資産に詳しい候補者が大統領選挙と同時に行われた連邦議会選挙で当選した。

今回の選挙は、暗号資産業界が成熟していくなか、今後数年にわたる暗号資産関連の法律や規制に影響を与える可能性がある。

ビットコインは5日20時30分(日本時間)、152万2000円近辺で取引されている。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:Shutterstock
原文:First Mover: Just Another Day for Bitcoin as US Election Slides Into Discord, Division