米司法省は11月5日、ビザ(Visa)によるフィンテック企業プレイド(Plaid)の買収中止を求め、裁判所に書類を提出した。反トラスト法(独占禁止法)に違反し、オンライン・デビットカード市場の競争を阻害すると訴えている。
北カリフォルニア連邦地裁に提出された訴状には、ビザはオンライン・デビットカード決済における「独占者」であり、反トランス法(独占禁止法)に違反していると記されている。
同訴状によると、ビザはアメリカ最大のカードネットワークを運営しており、オンライン・デビットカード決済市場で7割のシェアを占めている。プレイドはペイパル(PayPal)のベンモ(Venmo)や暗号資産取引所のコインベース(Coinbase)といった複数のフィンテックプラットフォームに技術インフラを提供している。
プレイドはまた、少なくとも2つのDeFi(分散型金融)スタートアップのダーマ(Dharma)とテラー・ファイナンス(Teller Finance )と連携している。
シェアの70%を占めるビザ
ビザ幹部はプレイドがライバル企業の手に渡った場合、2024年までに「ビザのアメリカでのデビットカード事業」は3億ドル〜5億ドルの「損失を被る可能性」があると試算していたとしている(同訴状)。ビザはプレイドを失うことは「アメリカでのデビットカード事業の存続の危機」につながる恐れがあり、「低いマージンを受け入れざるを得なくなる可能性もある。あるいは競争力のある提案ができなくなる可能性がある」ことを認識していたと米司法省は述べた。
今回の訴訟では、プレイドの現行の技術はビザと直接的に競合するものではないことを認める一方で、米司法省はプレイドのオンライン・デビットサービスはビザやマスターカード(Mastercard)の強力な競争相手になり得ると指摘している。
「仮に買収が認められると、この革新的な選択肢がアメリカの小売業者や消費者から奪われることになる」と米司法省のマカン・デルラヒム(Makan Delrahim)反トラスト局長は声明で述べた。
プレイドはコメントを控えたが、ビザの広報担当者は、訴訟は「法的に無効で事実に反している。(中略)ビザとプレイドの組み合わせは幅広い金融関連サービスを求める消費者に大きなメリットをもたらすことになる。ビザはこの取引を積極的に弁護していくつもりだ」とウォール・ストリート・ジャーナルに語っている。
翻訳:石田 麻衣子
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:Shutterstock
原文:Visa’s Planned $5.3B Purchase of Fintech Firm Plaid Challenged by US DOJ