新型コロナウイルスのワクチン開発が進み、グローバル経済の回復への期待が高まるなか、ビットコイン価格の上昇ペースはゴールドを大幅に上回っている。
ビットコインは11月に2割以上も値を上げて1万8000ドルを超えたが、ゴールドはわずか0.5%の上昇にとどまり、現在1オンスあたり1890ドルとなっている。
2021年上半期には正常化?
ゴールドのような伝統的な安全資産に対する需要は11月、製薬会社のファイザーとモデルナが新型コロナウイルス向けワクチンの開発について前向きな結果を発表したことで低下した。
ワクチン開発のニュースを受けて、グローバル経済は2021年上半期には正常化するのではないかという見方が市場から聞かれる。市場では、資金の流れが防衛資産からリスク資産へとシフトしてきていると述べるのは、サクソバンク(Saxo Bank)のコモディティ戦略責任者、オレ・ハンセン(Ole Hansen)氏。
ビットコインも、多くの人から「デジタルゴールド」と見なされている。しかし、伝統市場におけるリスク志向の高まりと、米株価の歴史的な高さは今のところ、ビットコインの上昇にブレーキをかけてはいない。
ビットコインは11月9日、ファイザーのニュースにもかかわらず1万5000ドル超えを維持し、11月16日にはモデルナの発表が株価を上昇させたにもかかわらず、5%近く上昇して1万5885ドルとなった。どちらの日もゴールドは大きく下落した。
ドルは2021年、大幅下落か
ビットコインの回復力は、強力な保有心理と供給不足に関連している可能性がある。
「ビットコインが1万1400ドル近辺で取引されていた1カ月前、マイナーは1時間に平均11ビットコインを取引所で売却していた。一方、1時間に214ビットコインが取引所から買われていった」とオンチェーン・アナリストで、ニュースレター「The Bitcoin Forecast」を発行するウィリー・ウー(Willy Woo)氏は11月17日にツイートした。
機関投資家の市場参入の増加に加えて、2万ドルに対して抵抗が見られないテクニカルチャートの分析はビットコインの強気トレンドを支えている。
ワクチンがもたらす楽観的な経済見通しや他の要因によって、米ドルは下落が予想されており、この先、ビットコインもゴールドも上昇する見込みが強い。
シティグループとゴールドマン・サックスのアナリストは、2021年にワクチンがもたらすドル安を予想しており、シティグループは米ドルが20%下落すると見ている。主要通貨に対する米ドルの価値を示すドル・インデックス(Dollar Index)は現在、92.30近くで推移し、年初から4%下落している。
さらに、ゴールドマン・サックスのエコノミストチームは、インフレが一時的に強まると予測しており、ビットコインやゴールドなどの希少資産にリスクヘッジとしての投資を呼ぶ可能性がある。
翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
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原文:Gold Lags Far Behind Bitcoin as Vaccine Optimism Buoys Markets