ビットコインは11月18日、2017年12月以来初めて1万8000ドルを超えた。
「気乗りしない売り手に対して、買いの強いパワーが津波のように押し寄せている」と暗号資産(仮想通貨)運用会社、バイトツリー(ByteTree)のチャーリー・モリス(Charlie Morris)CEOは顧客宛ての文書に記した。
「買い手は、個人投資家によく見られる少額ではなく、ビットコインにかなりの資金を投下している」
価格上昇の要因は?
新型コロナウイルス感染拡大が世界経済に大きな打撃を与え、安全資産に対するニーズは高まった。過去数カ月におけるビットコインの急騰は、マクロ経済要因が大きく影響していると言える。
一方、その価格上昇が単に、中国のマイナー(暗号資産の採掘者)が支払いに必要な現金を手に入れるためにビットコインを売却する場所を見つけることに苦戦している結果だとしたら?
つまり、市場に出回るビットコインが少なくなっており、それが価格を上昇させている一因になっている可能性は考えられないだろうか?
QCPキャピタル(QCP Capital)によると、政府がマネーロンダリングの取り締まりを強化したことによって、中国では一部のマイナーの銀行口座やクレジットカードが凍結されているという。ビットコインのマイニングパワーの70%は中国に依存しているため、ビットコインにとっては大きな問題だ。
マイナーはビットコイン売却に苦戦
取り締まりの過程で中国政府は、中国の顧客にサービスを提供する多くの暗号資産取引所、有名なところではオーケーエックス(OKEx)やフォビ(Huobi)にも影響を与えている。これらの企業の複数の幹部の身に起こったことについて、疑念が持ち上がっている。
オーケーエックスは共同創業者の「スター」こと、ミンシン・シュー(Mingxing Xu)氏が警察に拘束されたと噂され、10月16日に出金を停止した。同社はシュー氏が釈放されたと伝えられるなか、11月27日までには「出金を再開」すると発表した。
中国の相対取引(OTC)トレーダーもこの夏、現金を手に入れることに苦戦した。
ビットコインは「金融の未来」という議論があっても、電力会社、家主、保守管理業者には法定通貨で支払わなければならない。請求書はビットコインではなく人民元だ。
つまり、マイナーはビットコインを法定通貨に交換し、日々の運営を行っていく必要がある。なぜなら、中国の電力会社や水道会社は、ドル連動型ステーブルコインのテザー(USDT)での支払いは受け付けていない。QCPキャピタルによると、コリン・ウー(Colin Wu)氏が行った調査ではマイナーの74%が運営費を賄うために保有するビットコインを売却することに苦戦しているという。
ウー氏の調査は厳格な基準で行われていない可能性があり、調査結果を鵜呑みにすることはできないが、重要なデータの一つではある。
10月上旬以降のビットコインの上昇は脅威的だ。価格は約65%も上昇した。過去数週間、一部の中国の大手取引所では、アカウントが凍結され、幹部が突然、一時的にオフィスを離れる事態となった(図の丸で囲まれたところはマイナーによるビットコイン売却、左の矢印はOKExのシュー氏の身柄拘束、右の矢印はOKExのアカウント凍結の時期を表す)。
偶然だろうか?
ビットコインの取引高は好調で、18日には主要取引所で16億ドル(約1660億円)の取引が行われた。またビットコインオプションの建玉(未決済の契約総数)は40億ドル(約4160億円)超えの過去最高へと急増し、10月中旬から2倍となった。加えて、オプション市場は依然として強気となっている。
毎日、約900ビットコインがマイニングされている。現在の価格では、1600万ドル(約17億円)に相当する。1カ月では約5億ドル(約520億円)にのぼり、その多くは中国でマイニングされている。
供給は減り、需要は増加している。他のすべての条件が同じであれば、どちらか一方が価格を上昇させる。今は両方が揃っているのかもしれないが、どちらかが突然、以前の状況に戻れば、上昇と同じ速さで下落する可能性もある。
翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:Unsplash(CoinDeskが加工)
原文:First Mover: What China Crackdown Means for $18K Bitcoin as Dimon Passes on ‘Tea’