暗号資産のビットコインは今週、史上最高値に迫る勢いで値を上げたが、11月26日に大幅に下落した。
ビットコインは同日ヨーロッパの取引時間が始まると1万9300ドル超から1万6327ドルまで下落(CoinDesk 20のデータ)。その後は1万7200ドル付近で取引され、24時間では10%の下落となった。
25日には史上最高値1万9783ドルからわずか2%下回るレベルに迫った。
なぜ、3000ドルも下落したのか。CoinDeskは市場関係者への取材を行い、価格下落の要因をまとめた。
1. 過剰なレバレッジ
「ビットコインは、主要取引所に上場しているデリバティブでのレバレッジ取引の大規模な巻き戻しの犠牲になっている」と話すのはスタック・ファンド(Stack Funds)のマシュー・ディッブ(Matthew Dibb)CEO。
20億ドル近くのデリバティブポジションが過去24時間で清算された。データサイトのバイビット(Bybit)によると、過去12時間で16億ドル以上が清算されている。
レバレッジ取引の巻き戻しは予想されていた。資金調達率とも呼ばれる永久先物市場のロング(買い持ち)ポジションを保有するためのコストが、ここ数日で0.098%という高水準になっていたためだ。これは市場でのオーバーレバレッジ、つまり過熱のサインとされる。資金調達率は8時間ごとに決定され、支払われる。
データサイトのグラスノード(Glassnode)によると、価格下落に伴い、資金調達率は0.011%まで下がっている。
2. テクニカル分析の引き戻し
過去7週間の1万ドルから1万9400ドルへの上昇は、テクニカルチャートでは伸び過ぎているように見えた。
モメンタムは非常に強く、14日RSI(相対力指数)が買われ過ぎを示しているにもかかわらず、ビットコインは一貫して10日移動平均線(MA)を超えて取引されていた。
価格が急上昇することはめったにない。投機家は定期的に利益を確定させる傾向がある。価格を短期の移動平均線まで押し下げる結果をもたらす。ビットコインは過去の強気相場の時も、20%超の下落を何度も経験している。
今回の下落は、10日移動平均線を大きく下回り、RSIは70を下回って、売られ過ぎを示している。「ヘルシーな引き戻し」とスタック・ファンズのディッブ氏は述べる。
チャートアナリストによると、90度近くの高騰よりも、定期的な引き戻しを伴う価格上昇の方が持続性が高いという。
一部のトレーダーは、Deribit Insightsが指摘するように、プット・オプション、つまり売る権利を保有することで、引き戻しに備えていた。
3. その他の要因
トレーダーでアナリストのアレックス・クルーガー(Alex Kruger)氏によると、暗号資産(仮想通貨)取引所コインベース(Coinbase)のブライアン・アームストロング(Brian Armstrong)CEOのツイートは価格下落の一要因になった可能性があると指摘する。
アームストロング氏は、米財務省が自己ホスト型暗号資産ウォレットの所有者を調査するとの噂についてツイッターでコメントした。
「この規制上の懸念は、高揚感とロング・ポジションの持続不可能な高レバレッジを背景に、3月以来最大の24時間での下落につながった」とクルーガー氏は言う。
「万一、アームストロング氏が語ったことが事実だとすれば、市場はきわめて弱気になるだろう。今のところ、(短期的には)その可能性は非常に小さいと考えている」
また、大手暗号資産取引所のオーケーエックス(OKEx)が資産の引き出しを再開すると発表したことで、ビットコイン相場にはベア圧力がかかった可能性があるという。
「OKExに凍結されていたビットコインのほとんどは、凍結された当時、その後に高騰した価格の70%前後で取引されていたので、相当の含み益がロックされていた。引き出しが再開されて以来、多くのトレーダーが売却して利益を確定し、市場の売りに勢いを加えた可能性が高い」とCFベンチマークス(CF Benchmarks)のスイ・チュン(Sui Chung)CEOは述べた。
ビットコインは、OKExが協定世界時26日8時に出金を再開した時にはすでに1万7600ドル付近まで下落しており、その後の1時間で1万6350ドルまで下落しました。OKExは、ビットコインが1万1500ドル付近で取引されていた10月16日に出金を停止した。
まだ強気な理由
ビットコインの最小(最弱)抵抗線は、依然として上方にある。「直近の価格下落は、より大きな強気トレンドに対するノイズ」とクルーガー氏は述べた。
実際、市場に参入した機関投資家の増加、中央銀行による記録的な紙幣増刷、利回りの追求といった強気のマクロ要因は、価格下落にもかかわらず依然存在する。
26日のビットコイン保有心理は依然として強い。グラスノードによると、取引所におけるビットコイン保有数は238万4913ビットコイン、2018年8月以来の低水準となっている。
このデータは、投資家が現在の価格下落を強気市場の引き戻しと見ており、ビットコインの長期的な見通しに自信を持っていることを示している。指標は2020年に17%以上下落しており、これは市場の流動性が低下したことを意味する。
つまり、26日の急落は、ここまで述べたように過剰なレバレッジを解消した。ロング・ポジションを保有するコストが正常化されたことで、ビットコインは史上最高値へのより持続的な上昇を描くことができるようになったとも言える。
クリプト・ブローカーAG(Crypto Broker AG)のパトリック・ホイザー(Patrick Heusser)氏は、上昇トレンドが再開する前に、ビットコインは短期的には1万7500ドルから1万9000ドルの範囲で推移すると予想している。
「ビットコインはまだピークに達していない。また、多くのプロトレーダーはビットコインに投資している。投資は健全なポジションを取っており、全資金を一気に投資するのではなく、ビットコインが上昇したり、下落した時に資金を追加している」とインド・ムンバイに拠点を置く暗号資産取引所ワジールX(WazirX)の共同創業者兼COO、シッダース・メノン(Siddharth Menon)氏は述べた。
翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:ビットコインの24時間の価格推移(CoinDesk 20)
原文:3 Reasons Bitcoin Crashed by $3,000 – And Why It’s Still Bullish