スイスのシグナム銀行、デジタル証券プラットフォームを発表──日本が学べるものとは

スイスの金融市場監督局(FINMA)から銀行免許を取得しているデジタル資産関連会社のシグナム(Sygnum)は11月26日、「エンド・ツー・エンドのトークン化ソリューション」、いわゆる「デジタル証券(セキュリティトークン=ST)」を活用したプラットフォームを発表した。

シグナムが開発したのは、デジタル証券の発行プラットフォーム「Desygnate」と、流通市場「SygnEx」で構成される包括的な基盤。ブロックチェーンを使ってデジタル証券を発行・流通・管理することで、企業(発行体)は証券取引所に株式を上場することなく、資金調達ができるようになる。

デジタル証券(セキュリティトークン)を用いて資金を調達する方法をセキュリティートークンオファリング(STO)と呼ばれるが、日本でもSBIホールディングスや野村ホールディングス、みずほフィナンシャルグループなどがデジタル証券の発行基盤の開発を進めている。

スイスフラン連動のデジタル通貨を活用

デジタル証券の発行者は、資本調達、流動性の拡大、所有権の移転などの管理が可能になる一方で、投資家はデジタル証券へのアクセスが容易になる。ベンチャーキャピタルや、中規模(時価総額が20億ドル〜100億ドル)の企業、不動産、美術品やコレクターズアイテムなどが顧客ターゲットとして想定されている(シグナムの発表文)。

ブロックチェーンを活用することで、24時間365日の即時決済が可能になり、スイスフランに連動した独自ステーブルコイン「デジタルCHF(DCHF)」の採用によって、カウンターパーティーリスク(取引相手の信用リスク)を軽減することができるとシグナムは述べた。

「DesygnateとSygnExを使って、シグナムはブロックチェーンを活用したビジネスソリューションを市場に提供し、資本市場の参加者にビジネスを行うための新たな機会を切り開いていく」

60万社のスイス中小企業

シグナムによると、すでに複数の企業がトークン化ソリューションを活用し、その他多くが使用を開始する予定だという。

使用企業には、資産運用会社のAzimut Group、不動産投資会社のImoZins、不動産トークン提供会社のCrowdliToken、電気自動車会社のBAK Motors、ワイン投資会社のFine Wine Capital AGなどがあげられる。

伝統的な資本市場に代わるものとして、高いコストと煩雑な上場要件を回避しつつ、企業の資金調達を支援することができると、シグナムは発表文で述べる。

「スイスの推定60万社の中小企業と毎年誕生する4万5000社の新たな企業は、デジタル証券を発行することで、より広範な投資家ネットワークを獲得し、資金調達を行うことができるようになる。デジタル証券は流通市場のSygnExで安全に取引できる」

翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:Shutterstock
原文:Swiss Digital Asset Bank Sygnum Launches Blockchain Alternative to Stock Exchanges