2020年、ナスダックに上場する米マイクロストラテジー(MicroStrategy)は、4億2500万ドルをビットコインにつぎ込み、同社資産の一部を暗号資産(仮想通貨)で保有する資産運用を開始し、大きな注目を集めた。その大型取引を支援したのは大手暗号資産取引所のコインベース(Coinbase)だった。
コインベースは12月1日、同社が8月にマイクロストラテジーの2億5000万ドル(約260億円)相当の最初のビットコイン購入を複数回にに分けて行ったと発表。実際の取引は、コインベースがタゴミ(Tagomi)を買収した後に設立した暗号資産仲介部門「コインベース・プライム(Coinbase Prime)」が行った。
マイクロストラテジーは翌9月に、さらに1億7500万ドルの追加購入を実施し、同社のビットコイン購入額は4億2500万ドルとなった。マイクロストラテジーは、内部留保として大量のビットコインを購入・保有する初の上場企業となったと報じられた。
新しい企業資産アロケーション
オンチェーンデータによると、マイクロストラテジーが8月にビットコイン購入を発表する数カ月前に、コインベースが大口取引を行っていたことがわかる。合計で約8万BTCものビットコインが2020年半ばにコインベース・プロ(Coinbase Pro)から移動を始め、秋頃に終えた。
「移動したビットコインは取引所のウォレットではなく、(店頭取引ウォレットと相互運用されている)コインベース・カストディ(Coinbase Custody)のウォレットに保管された」と、分析企業クリプトクワント(CryptoQuant)のキ・ヨン・ジュ(Ki Yong Ju)CEOは述べる。
CoinDeskは、マイクロストラテジーのマイケル・セイラー(Michael Saylor)CEOに取材を試みたが、コメントは得られなかった。
コインベースの発表には、マイクロストラテジーの以前のプレスリリースから、ビットコインへの投資は「新しい資産アロケーション戦略」の一環というセイラーCEOの発言が引用された。マイクロストラテジーは「現金よりも将来に価値が上がる可能性が高い」ビットコインを利用して、株主にとっての長期的価値を最大化することを目指しているという。
市場に影響を与えない購入ペース
コインベースはマイクロストラテジーと複数回の打ち合わせを行い、一連の取引を説明。マイクロストラテジーからは小規模な「テスト取引」を行うよう求められたという。
コインベースはテスト取引で収集したデータを分析。市場への影響を最小限にするために最適な購入ペースを決めた。マイクロストラテジーは購入が終了すると、より大きな投資を進めるためのゴーサインを送った。
テスト取引の後、コインベースは時間加重平均価格アルゴリズムを使ったリアルタイム取引を実施。市場への影響を最小限にするために、特定期間における資産の平均価格を考慮する方法だ。
「(コインベースの)システムは、1つの大規模なオーダーを多くの小さなオーダーに分割し、複数の取引プラットフォームで実行する。トレーディングチームは、購入がスタートした時の価格よりも低い平均価格で購入することに成功した」(コインベースの発表文)。
ブライアン・アームストロング(Brian Armstrong)CEO率いるコインベースは、上場企業が内部留保として巨額の資産をビットコインに投資することをサポートした取引所として、マーケットにアピールした。
翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:コインベースのブライアン・アームストロングCEO(CoinDesk archives)
原文:Coinbase Brokered MicroStrategy’s $425M Bitcoin Purchase, Exchange Says