ビットコインマイニング機器の中古市場が活況だ。需要の急増で、メーカーの納期に遅れが生じていることが背景にある。
マイニング機器の2大メーカーであるビットメイン(Bitmain)とマイクロBT(MicroBT)では、新しい機器は来年5月まで品切れだという。客からの注文が製造能力を超えている。機器集めに奔走するマイナーは、どんなものでも手に入れようと中古市場に目を向けた。
ビットメインの国際マーケティングディレクター、ナタニエル・ユー(Nathaniel Yu)氏は、ビットコインが年初以来166%上昇していることが、新しいマイニング機器、特に同社の19シリーズに対する需要が強まったと話す。
ビットコインの高騰で注文殺到
ライバルのマイクロBTのセールス担当バイスプレジデント、ビンセント・ツァン(Vincent Zhang)氏は、在庫状況についてのコメントを控えたが、高効率なマイニング機器に対する需要は高いと述べた。
「ビットコイン価格が上昇した際、注文が殺到した」と話すのはニューヨークに拠点を置くマイニング企業、ファウンドリー(Foundry)の事業開発担当バイスプレジデント、ケビン・ツァン(Kevin Zhang)氏。需要に見合う十分な数のマイニング機器を供給するには、マイニングチップをめぐる競争に対処しなくてはならないとツァン氏は話す。
マイニング機器メーカーが必要とする7nm(ナノメートル)と8nmのチップには、アップルやエヌビディア(Nvidia)のような大手テック企業からの大きな需要がある。
アップル、エヌビディアとの争奪戦
チップの供給をめぐって、こうした大手企業と競争した場合、ビットコインのマイニング企業は通常、優先度の低い顧客として扱われる傾向にある。チップ供給での困難な問題に直面するメーカーから新機器を受け取ることができなければ、マイナーは当然、中古市場に殺到する。
通常は大きな動きのない中古市場の取引状況は現在、半減期前の水準かそれ以上のレベルだと、マイニングソフトウエア企業、ルクソール・テクノロジーズ(Luzor Technologies)の共同創業者、グズマン・ピントス(Guzmán Pintos)氏は推測している。
今年5月のビットコインの半減期前、マイニング報酬は現在の2倍の水準で、マイニング市場への参加者は今よりも多かった。
厳しい需給のアンバランス
より厳しい供給と需要のアンバランスを指摘しているのは、マイニグソフトウエア企業、HASHR8のトーマス・ヘラー(Thomas Heller)氏。マイニング機器の中古市場は、2017年後半、あるいは2018年初めの暗号資産市場のピーク時以来の活況となっているとヘラー氏は説明する。
入手可能なマイニング機器に対する強い需要は、機器の価格のボラティリティと値付けに表れている。一部の機器では、価格は「1週間単位で簡単に10〜20%変わる」とピントス氏は指摘した。
中古マイニング機器の価格上昇のボラティリティがビットコインのボラティリティを上回ることは珍しくないとヘラー氏は加えた。
旧世代の中古マイニング機器の価格は数カ月で、40〜50%上昇していると大手マイニングハードウエア&サービス提供業者、ブロックウエア・ソリューションズ(BLockware Solutions)のメイソン・ジャッパ(Mason Jappa)CEOは述べる。「S19 Pro」のような新しい機器は、中古市場で約25%とより緩やかな上昇となっている。
供給ひっ迫の長期化懸念
2大メーカーのビットメインとマイクロBTが5月まで在庫切れ状態となるなか、マイニング機器市場は「現時点で真の売り手市場」に変わっているとジャッパCEOは言う。
ジャッパCEOによると、強い需要と限られた供給という現在の状況の中で、多くのマイナーは「可能な限り納期の早い機器を中古市場で奪い合う」状況にある。
ビットコイン価格はもちろん、マイニングを取り巻く市場のムードは現在、「きわめて強気」とジャッパCEO。今後もビットメインとマイクロBTからの出荷予定は延び続け、中古市場の価格は上昇を続けるだろうと、同氏は述べた。
翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:Luxor Technologies, CoinDesk Research
原文:Secondary Mining Markets Surge Amid ASIC Manufacturing Delays